8月1日② 夏休み、隣の席の女の子と友達っぽい事をしました。
俺は言われた通りただ
「…友達っぽいことってゲームセンターなの?」
「もちろん!放課後に友達とゲーセン!憧れでしょ!」
「本当かなぁ。」
「ほら、行くよ!」
友達の居ない俺には分からないが、彼女の目の輝きから言って行きたかったのは嘘ではなさそうなので、そのまま彼女に付いて行く。
「まずはこれ!」
そう言って彼女が指差したのは、今流行中のアニメキャラのぬいぐるみが入ったクレーンゲームだった。
「私がやったらただの怪奇現象だからさ、大地がやってよ。お金も持ってないし。」
「俺がやるの!?」
「そうそう。私は横から指示するからさ。」
俺はしぶしぶ財布から五百円玉を1枚取り出し、機械に入れる。
百円で1回と書かれていたが、一回では取れないと思い俺はお得な五百円で6回を選んだ。
「お~!太っ腹!」
「うるさいよ。俺もやるからには取りたいんだよ!」
茶化してくる彼女にそう言って、俺はボタンを押した。
「もっと右だよ、右!」
「右?」
「違う違う!もっと左!」
「どっちだよ。」
そんな風に言いながらクレーンゲームをして、合計1000円の12回目でぬいぐるみを取ることが出来た。
「やったね!」
嬉しくてハイタッチを求める格好をついしてしまったが、俺は咄嗟にその手を引っ込める。
申し訳ないことをした。
彼女も俺が何をしようとしていたのか察して少し俯いている。
彼女は嬉しいときにハイタッチもできないのかと悲しく思った俺は取ったぬいぐるみを見て閃いた。
「ほら!イェーイ!」
俺はぬいぐるみの手の部分を持ち、ぬいぐるみにハイタッチを求める格好をさせた。
「人には
顔を上げ俺の方を見た彼女は、目を輝かせて右手を高く上げぬいぐるみの手とハイタッチをした。
その衝撃がぬいぐるみを伝い、俺の手まで届いて来て、和奏の嬉しそうな顔を見た時、俺はとても嬉しかった。
それからも2人(傍から見れば1人)でゲームセンターを堪能した俺達は日も落ち始めたので今日は帰ることにした。
「友達っぽいことできたのかな。」
「出来たよ!すっごい楽しかったし。大地のお陰だよ。」
「それなら良かったよ。やりたいことあったらまた言ってね。協力するからさ。」
「本当?」
「ああ、本当さ。遊ぶ友達いないから毎日暇だし。」
「じゃあさ、もう1つだけお願いしてもいい?」
彼女は手を合わせて俺に言ってくる。
「大地の家行ってもいい?」
「はい?今から?」
「あ~、ごめん。今のじゃ語弊があるね。行くじゃなくて、私はオバケだから~、
大地の家に住み着いてもいい?」
そんな突拍子もない発言に驚き固まっていると、
「ほら、私オバケじゃん?だから、家って言う家が今無いんだ。お願い!」
俺は一人で暮らしているから別に問題はない。
でもいいのだろうか、オバケとはいえ一人の女の子を男子の家に入れるという行為は。
俺の中でそんな葛藤が繰り広げられるが、それに終止符を打ったのは和奏の言葉だった。
「夏休みの間だけでいいから。ダメ?」
夏休みの間だけ、8月31日から学校が始まるから、30日までということだ。
さらに、そんな上目使いで頼まれたらどんな男でも断れないものだ。
「夏休みの間だけなら、いいよ。」
「やった~!!」
俺の了承を聞いた彼女は「お泊り、お泊り~。」と夕日に照らされた道を鼻歌交じりでスキップしていた。
そんな彼女が綺麗で、俺は思わずスマホのカメラを構え、シャッターを押したが彼女の姿は映ることは無かった。
この時、俺は彼女が本当にオバケであることを改めて実感したのだった。
「大地~!早く!」
そう俺を呼ぶ和奏の姿は俺の目にはしっかり映っていた。
────────────
あと1話本日更新します。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます