第13話 占いの結果
「あっ、違います。ヘカレスさんと待ち合わせです」
という赤ネームは22人も居る。PKするなら大御所の咒鬼に所属していた方がいい。結成したての餓狼牙では戦争は起こせない。だから人数を増やすとヘカレスが言うのならそれも良しだ。
するとタヨタ銀行屋上にヘカレスが飛んできた。周りと比べると結構図体が大きなことに今更ながら疑問が浮かぶ。
そしてヘカレスから通話がきた。
「よっ、お待たせ。彼らは移籍したいって連中だ。だが断るつもりでいる」
「何でなの? 元同じギルメンでは?」
「しばらくは少数がいい。そして自分で納得して選んだ相手を加入させたい」
そう言って22人の元へ行く。
入りたいと言う彼らもなかなか引かずにいる。それだけ餓狼牙に入りたいと思うのは何故だろう?
咒鬼はギルマスの裏切りが発覚したけれど、PKランキングは1位をキープしている。そんな大御所ギルドの方が恩恵は大きいよと思うのだが、彼らの気持ちを聞きたい。
「今は少数精鋭でやっていく。戦争したくなったら声をかけるよ。その時になってから来るか来ないか考えてくれればいい」
「ヘカレスさんに憧れてPKになったんです。ついて行きたいんです」
確かにヘカレスは色々な意味でお尋ね者だ。しかもやることが大胆過ぎる。
そこが良いって奴らが22人も来たと思っていいだろう。真剣な眼差しでヘカレスに思いを語るが、首を縦に振ることはなかった。
今回の一件で一番傷付いたのはヘカレスだ。
その気持ちを察するのなら、静かに引くべきだと思う。
そして結果は肩を落として背を丸めて消えていった。
咒鬼に不満があるわけではないが、ヘカレスについて行きたいと言う者達だったことは忘れてはならない。
「それでさー、占いって知ってる?」
「何だそれ? クエストか?」
どうやらエイジャの森の占いを知らないらしい。当たると有名な占いで少し変わっていることを話すと、興味が湧いたのか行くことになった。
確かこんな話だったはずだ。
「エイジャの森が霧で覆われる時、死人が姿を現すだろう。
賢者は1万リベルを懐にしまい、愚者は文無しで来る。
賢者よ。鏡の前に立って目を閉じるがよい。
そなたに予言を授けよう」
「1万リベルだけ鞄に入れていけばいいんだな」
するとヘカレスがポータルブックを手に持ち、スクニブルへ飛んだのを見て後を追った。倉庫の上から海を見ると、泳いでいるプレイヤーは居なくなっている。彼は大金を手にしたのだろうか?
スクニブルの街を南に出て、大きく回り込むように東へ進み、エイジャの森を目指す。すると木が生い茂り、雑草が自由に伸び放題で陰湿だ。それでも獣道を通って森の中に入ると、温度が下がり涼しくなった。
さて、霧は発生していない。手分けして探そうということになり、更に東へ向けて馬を走らせる。霧の発生は広範囲だから見付けられるはず。問題は鏡の方だろう。
陽が登り朝日が大地を照らす頃、遂に霧が発生し始めた。急いでヘカレスに連絡をして合流する頃には、骸骨が徘徊している。
「あとは鏡を探すだけか?」
「うん、そう。そして鏡の前に立って目を閉じるだけ」
現れた骸骨は攻撃をしてこない。こちらから攻撃をしたら、数の暴力で逃げる羽目になるかもしれないから距離を置こう。
「おい、鏡があったぞ」
と言うヘカレスの元へ行くと確かに姿見がある。木の枠に鏡が取り付けられている簡単な物だった。馬を降りて姿見の前へ行くと、目をゆっくりと閉じて気配を探った。
1万リベルは高過ぎる。それだけの成果を見せないと、殺すよと脅したくなる。掲示板にも書かれていたように、1分が過ぎたところで鏡から離れてヘカレスを見る。
ヘカレスは馬を降りて、同じように姿見の前に立った。
「なぁ、全身を映すにはかなり離れないとだぞ」
そうだった。この身長だとかなり遠くへ行かないと駄目だ。
掲示板には特に全身とは書かれていなかったから、顔が映ればいいのではと答えた。
そして、鏡の横から注意深く見ていると、生い茂る雑草が踏まれるのを見た。
誰か居るのは分かっているが、その正体を誰も知らない。シークレットイベントとも言われているが、真相は謎のまま。
そしてヘカレスは鏡から離れると、お互いに鞄を開けてみた。
「「本が入ってるぞ」」
ほぼ同時にハモっていた。そして1万リベルがなくなっていることに気が付き、辺りを見回しても誰も居ない。ここで拳銃を乱射すれば誰かに当たるかもしれないが、夢を壊すのも良くない。
個人でこれを運営しているとなれば大変なことだろう。
だが謎は解かしてもらう。
「ガブリエラ。何て書いてあった?」
「山の頂、万年雪の絨毯。
貴方は空を羽ばたく1対の翼を持ったものと出会うだろう。
亥の刻であなたを待っている。
その時、血が滴る生肉を多めに持つと良い」
分かるようで分からないが、山の頂へ行けということらしい。生肉はバザーで売っているから大量に買っておこう。
そしてヘカレスが本を開いて読み始める。
「地に咲く花を見ている者。
輝く刃を振り上げる者。
熟れた果実が落ちるように、大地を紅く染めるだろう。
大きな魚は酒を飲むことを忘れるな」
なんかヤバい結果が出た気がする。
占いは確実に当たるとは言われていない。当たる者も居れば、外れる者も居る。
それが凶の結果だったとしても、気を付けていれば迂回はできる。
「なんか俺の占い、ヤバくねーか?」
「ここを移動してゆっくり考えようよ」
ということでタヨタ銀行屋上へ移動した。
受け取った占いは出会いの句に対して、ヘカレスの句は死を予感させる。2度あることは……。そう考えてしまうのは通常の思考だろう。
それより根本的な謎が残されている。
どうやって鞄の中に本を入れたのかだ。ヘカレスの句によってシークレットイベントではないことが分かる。なら誰が入れた?
「本を鞄に入れる謎は分かった?」
「いや、全然分からない。知識が増やせば増やすほど分からなくなる」
まずはセキュリティボムをどうにかしないとならない。
トラップを解除するリムーブトラップだと、セキュリティボムを解除できるがハイドが解けて姿が現れてしまう。実際に試さないと分からないが、掲示板に実験した者の書込みがある。
ならどうやって解除したのか? 実際にエイジャの森では1万リベルが盗られ本が入れられている。
「さぁ、謎解きと行こうか!?」
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