特集『筋肉式魔法運用術』 〜週刊ダンジョン現代〜

真偽ゆらり

身体強化魔法

「まずは筋肉をつけよう!」


――魔法の運用術……ですよね?


「確かに筋肉式魔法運用術は身体を鍛えなくても使う事はできる。だが、その真価を発揮させるには鍛えられた肉体が要るのさ」


――なるほど。その話は追い追い聞くとしてですね、やはり使う魔法は身体強化魔法ですか?


「筋肉式魔法運用術は身体強化魔法に限った話ではないよ。もっとも身体強化魔法は筋肉を魔法で運用するすべだから、むしろ魔法の中では縁遠い方かもしれないね」


――そういうものなんでしょうか……


「一応、身体強化魔法の運用術もあるよ」


――あるんじゃないですか。ひとまずそれからお聞かせ願いますか?


「最初に言っておくと、筋肉式魔法運用術における身体強化魔法はおよそ実用的ではない」


――実用的ではないんですか。


「危険と隣り合わせのダンジョン探索やモンスターの討伐で使うには少しリスクが大きいかな。そのリスクを許容できる範囲であれば有用かもしれないけど」


――そのリスクとは?


「筋肉痛です」


――き、筋肉痛ですか!?


「説明を省き過ぎましたね。筋肉式魔法運用術における身体強化魔法は一般的に使われているモノとは少し異なるんです」


――カスタムした魔法を使うんですね。


「ええ、より正確に表現するなら改悪した身体強化魔法ですね」


――改悪って、大丈夫なんですか?


「大丈夫ですよ。身体強化の反動を無効化する部分を削って身体強化の度合いを高めているだけですから。もちろん過剰に強化される事の無いよう制限は付いてます」


――つまり普通の身体強化魔法よりちょっとだけ出力が上だけど効果が切れた瞬間、筋肉痛になる魔法だと。


「そうなりますね」


――なんでまた、改悪した魔法を?


「筋肉の超回復はご存じですか?」


――傷ついた筋肉が回復する際、前よりも強くなる……あ!


「気付かれたようですね。そう、筋肉式魔法運用術における身体強化魔法は運用するための準備である筋トレに使うんです」


――なるほど。活性化の魔法も合わせると効率が良さそうですね。


「活性化の魔法を使う鍛錬は専門家の指導がないと危険ですよ」


――加減を間違えると治癒の為に体力を使い過ぎて逆に死ぬってやつですか


「そこまでではないですが、超回復に必要な栄養素が足りなくて逆に瘦せ細ってしまう可能性がありんだ。その際は凄まじい飢餓感に襲われるので、そのまま餓死することはまず無いだろうけどね」


――軽く掛けてもらっただけでも結構お腹が空きますから容易に想像がつきます。


「急速に筋肉をつけたい場合は回復魔法を用いたマッスルブートキャンプがお勧めです。うちでもやってるので希望者は是非ご連絡を」


――勝手に宣伝しないでください。マッスルブートキャンプは取材した事ありますが、回復魔法でエンドレスに筋トレさせらるのは一種の拷問です。


「結果はお約束しますよ?」


――おかげさまでスーツを新調する羽目になりましたよ。


「話は戻りますが筋肉式魔法運用術における身体強化魔法にはマッスルブートキャンプはにない利点があります」


――話、戻ってます? まぁ、いいでしょう。その利点とは?


「使う筋肉だけを鍛えられるという点です」


――なるほど、肉体の最適化ですね。


「ええ、それが先ほどのリスクを許容できる場合に有用である理由です」


――鍛錬目的であれば実用的であると。


「言ったじゃないですか筋肉式魔法運用術を運用する為の筋トレ用魔法だと」


——そうでした。


「それに新人冒険者を鍛えるのにも向いてますからね。筋肉式魔法運用術で同期に差をつけよう! 昨日よりも強い君を約束する! 強くなりたい、興味のある方は是非事務所までご連絡下さい。資料を無料でお送りします」


——あの、本誌の巻末に広告ページを載せてるんですから唐突な宣伝はやめてください。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る