筋肉好きな人ー? はーい!

オビレ

第1話

「筋肉好きな人ー? はーい」


 かおりが手を上げながらそう言うと、ももちゃんがすかさず手をあげた。

 ここにいる三人の中で、私だけが手を上げなかった。


「ちょっと陽奈ひなまじー?」


 少し驚いたような顔のかおり。


「まじまじ。別に筋肉求めてないし」

「うひゃー。言うねぇ」

「でもさ、陽奈の歴代の彼氏振り返ったら納得いくよね」

「あ~……だねぇ……全員ひょろひょろだったかぁ」


「何言ってんの二人とも!? どこがひょろひょろでしたぁ!?」


 憐れむような目で私のことを見る二人の彼氏は、大学でラグビー部に所属しているラガーマンだ。


「だってさぁ……ねぇ~?」


 そう言って桃ちゃんと目を合わせるかおり。


「あのですね? 二人の今彼いまかれと比べられちゃあ、そりゃなんも言えないですよ!?」

「待った待った! ラガーマンじゃなくてもさぁ、そこら辺にいる人に比べて、一般的にひょろかったよねって話」


 かおりはすぐそうやって反論してくる。


「どこがよぅ! そりゃ……細かったけど……」

「細マッチョじゃない、ただの細い人ね」

「桃ちゃんまでぇ!!」


 この後、二人に筋肉の良さを語られたが、特になんとも思わなかった。

 あの二人は筋肉に捉われすぎている。

 見た目より中身が大事だっての。

 そう思っていると、


ドンッ


 改札口の手前にある階段の上から勢いよく降りて来た誰かが、登っている最中の私にぶつかった。


 私は体勢を崩し、


”落ちる!!”


 そう思った直後、


ナイスキャーッチ!


 とでも言われそうな動きで、よろける私を華麗に受け止め、私の体を元の体勢にぐいっと引き戻したのは、ラガーマンまではいかなくとも、ガチっとした体形の男性だった。


「大丈夫ですか!? 危ないですね……」


「……ありがとうございます……!!」


 私がこのマッチョな男性に一瞬で心を奪われたのは言うまでもない。

 この日から、私はあの二人と筋肉について語り合うようになった。

 筋肉フェチ三人組の誕生である。 



 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

筋肉好きな人ー? はーい! オビレ @jin11

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ