モテるために、筋肉の神の試練に挑む

三国洋田

第1話 筋肉の神を名乗るギャグの神

 むかし、むかし、でもなく割とごく最近。


 まったく女性にモテなくて悩んでいる、日本人の青年がいました。


 その様子を見たギャグの神は、青年に声をかけることにしました。


 理由はもちろん面白そうだからです。


「おおっ、迷える子羊よ、私ちゃんの声に耳を傾けるざます」


「えっ!? な、なんだ今の声は!? いったい誰の声なんだ!?」


「私ちゃんは『筋肉の神』ざます」


「筋肉の神!?」


 ギャグの神は平然とウソをつきました。


 これは邪神ですね!



「そ、それで、その筋肉の神様が、なんのご用でしょうか?」


「君は女性にモテなくて悩んでいる、そうざますね?」


「ええっ!? な、なぜそれを!?」


「私ちゃんは神だから知っているざます」


「ああ、なるほど、さすがは神様、すごいですね!」


「そんな君に、モテるための試練を用意したざます!」


「モテるための試練!?」


「そうざます。これを乗り越えれば、痩せすぎな君も筋肉がついて、女性にモテるようになるざます」


「ええっ!? 本当ですか!?」


「もちろん本当ざますよ」


 筋肉があっても、モテるとは限りませんよ。


 皆さん、注意しましょうね。


「なら、受けます! 受けさせてください!」


「よろしいざます」


 ああ、純情な青年がだまされてしまいましたよ。


 皆さんは、怪しい神のお告げにだまされないようにしましょうね。



「では、さっそく試練を与えるざます」


「はい!」


「まずは『筋肉一発ギャグ』をやるざます」


「き、筋肉一発ギャグ!? なんですか、それは!?」


「名前通りのものざます。さあ、始めるざます」


「そ、そんなことを言われましても…… いったい何をすれば良いのですか?」


「それを考えるのも試練のうちざます。がんばるざます」


「わ、分かりました……」


 青年が頭を抱えて、悩み始めましたよ。


 悩みが増えてしまいましたね。



「神様! 筋肉一発ギャグ思い付きました!」


「では、始めるざます」


「はい! いきます!」


 青年が服をすべて脱いでしまいましたよ。


 いったい何をするのでしょうか?


「ボディビルダーのモノマネ!」


 青年がそう言いながら、サイドチェストをしました。


 ちなみに、サイドチェストというのは、ボディビルディングのポーズの一種です。


 詳しく知りたい方は、検索してください。


「ほう、筋肉のまったくない体で、ボディビルダーのモノマネざますか…… その滑稽な姿がギャグというわけざますね?」


「はい、その通りです!」


「ふむ、なかなか面白いざますね。合格とするざます」


「ありがとうございます!」



「では、次の試練を与えるざます」


「えっ、まだあるのですか!?」


「そう簡単に、モテるようになるわけないだろざます」


「な、なるほど、確かにその通りですね…… では、何をするのですか?」


「次は『女性にモテる筋』に、直接負荷をかけるざます」


「女性にモテる筋!? なんですか、それは!?」


「名前通り、女性にモテる能力が高まる筋肉ざます。ここを鍛えるとモテるようになるざます」


「そ、そんなのあったのですか!? 聞いたことがないのですが!?」


「地球人は発見していないざます。しかし、存在するざます」


「そうだったのですか!?」


 もちろん、そんな筋肉はありません。


 邪神がウソを言っています。



「それで、具体的に何をすれば良いのですか!?」


「それは『女性にモテる筋一発ギャグ』をやるざます」


「なんですか、それは!?」


「女性にモテる筋を鍛える唯一の方法ざます。やり方はカツラをかぶって、一発ギャグを行うざます」


「カツラですか!? うちにはありませんよ!?」


「それは私ちゃんが用意するざます」


 邪神がそう言った直後、青年の周囲にさまざま髪型のカツラが出現しました。


「それを使うざます」


「分かりました! やってみます!」


 青年がギャグを考え始めました。



「思い付きました!」


「では、始めるざます」


「はい、いきますよ!」


 青年が、長さ一メートルくらいある小麦色の髪がすべて逆立っているカツラをかぶりましたね。


 いったい何をするのでしょうか?


「毎日二〇時間勉強して、頭を鍛えていたら、こうなりました! ちなみにテストは〇点でした!!!」


「ほう、なるほど、勉強をしていたのに、なぜか髪がそうなったということざますね」


「はい!」


「まあまあざますね。まあ、良いでしょうざます。合格とするざます」


「ありがとうございます!」



「これで試練は終了ざます。よくやったざます」


「そうなんですか!? ありがとうございます!」


「自分の体を見てみるざます」


「えっ!?」


 青年のやせ細った体が、ちょっとやりすぎなんじゃないかと思えるほど、筋肉ムキムキになっていました。


「い、いつの間に、こんなことに!?」


「つい先程そうなったざます」


「そうなんですか!? 気付きませんでしたよ!?」


「そこは気にするなざます。それよりも、その筋肉ならモテるざます。さあ、好みの女性に声をかけに行くざます」


「分かりました!」


「では、私ちゃんは帰るざます。健闘を祈るざます」


「はい、ありがとうございました!!」



「さて、さっそく出掛けるか!」


 青年が出掛けるために、着替えようとしているようです。


「あ、あれ?」


 しかし、今の青年に着れる服がないようですね。


 これでは出掛けることができません。


「どうしよう? あっ、そうだ!」


 青年がスマホを操作しようとしています。


 どうやら服を買おうとしているようです。


「あっ!?」


 青年がスマホを壊してしまいました。


 筋肉が異常に発達したせいで、力加減を間違えてしまったようです。


「ど、どうすれば良いんだ!?」


 どうやら青年は、あのスマホ以外の通信機器を持っていないようです。


 これは非常にマズいですね。


「あっ! あれならなんとかなるかもしれない!!」


 青年が茶色のロングコートを取り出しました。


 それならなんとか着れそうです。


 青年はロングコートだけを身に着けました。


 中は当然全裸です。


 これは不審者ですね。



「よし、行くか」


 青年がその格好で外に出て行きました。


 そして、すぐさま通報され、警察に捕まりました。


 その格好では、仕方がないですね。



 めでたくなしめでたくなし。


 おしまい!!!!!

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モテるために、筋肉の神の試練に挑む 三国洋田 @mikuni_youta

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