何マラソンですか?これは。
珀武真由
あっ……ぶら下がってる。
足が遅かった私。高校一年の冬マラソンで頑張って走っていたが最後方。友達には置いて行かれるし最悪。
そう思い、走っていたら声をかけられた。
「おお、なんや知り合いがおるってお前か」
「お前って先輩……」
一つ上の憧れの先輩男子だった。
「先輩、足速かったやん? 何で後ろ?」
部が一緒の先輩はこの間の体育祭で百メートル走を圧巻見事の一位だった。なのにと笑いつつ話す私。
「肺の大きさが違うから長距離は止められてるねん。だからほら。脚振り上げて、わんつーわんつー」
先輩は上下に腕も脚も大きく振り上げ、私以上に戯けた。
「何それ、変なの」
私に受けたことに先輩は大笑い。
「あかん、胸痛いわ肩貸して」
先輩がわざと体の力を抜き、よろろと蹌踉めき私の肩に。私は笑顔で誤魔化したが内心、心臓が躍っていた。
「もう、何してるんよ。後輩の肩に乗っかってんと歩け~」
後ろから部長の声がする。
「なんや、胸だけが走っとるでお前~こいつみたいに痩せやぁ」
部長は胸が大きいが絞まるとこはしまっており、顔も可愛い。学年問わず男女ともに人気の眼鏡が似合うインテリ女子だ。
生徒会もしていて頭も賢い先輩。そして二人はお似合いだった。
「もう、歩こう。ほら肩あけぇやぁ、私も凭れるんやから。なぁ」
先輩女子の明るい笑顔が眩しい。でも私は二人の重みでぐらつき倒れそうになる。
「ほら、お前胸重いから見てみ、この子倒れそうやん」
「そう言いながら、どこ触れとんねんあんた。その汚い手どけぇこの子が穢れるやん、しっしっ」
飛び交う言葉の嵐に私は可笑しくなった。そして気が付くと先輩達より身長十センチ低い私は二人に持ち上げられていた。
「せんぱ~い」
「あらっ、可愛いこのまま歩く?」
「すまん離そか?」
体が弱いとはしゃぐ先輩二人は私より力が強く、ある意味健康だった。
私はその日から少しでも筋肉を付けようと朝少しの距離を、走ることにした。
何マラソンですか?これは。 珀武真由 @yosinari
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