筋肉と美少年

@curisutofa

筋肉と美少年

『はっはっはっ』


『君の身体はかなり完成されていると感じるけれど、鍛錬に手を抜かずに一日も休まないね』


同じ学び舎の男子寮で生活をしている、褐色ブルネットの美少年でもある学友が、ご父君から届けられた高級菓子をお裾分けに来てくれたが。自分は日課の腕立て伏せを行いながら。


『はっはっはっ。一日でも鍛錬を怠れば筋肉は直ぐに衰える。代わりに夜の睡眠は十分に取っている』


ご父君から送られて来た高級菓子を、優雅エレガントな所作で一口食べた褐色ブルネットの美少年でもある学友は、軽く肩を竦めると。


『君の筋肉は同学年の中では一番完成していると感じるけれど、何かに急き立てられているかのように鍛錬を行っているね』


自分の学友には鋭い人物が多いので、隠すだけ無駄だと思い。


『はっはっはっ。自分には筋肉しか取り柄が無い。総合成績順位で首席でもある黒髪シュヴァルツの彼のように完全記憶を有している訳でも無く。次席の金髪ブロンデス・ハールの彼のように祖父譲りの怪物ウン・ゲホイヤー的な素質を有している訳でも無く。三席の銀白色ズィルバー・ヴァイスの髪の毛をされている令嬢フロイラインのように、剣術における天賦てんぷの才を有している訳でも無い』


休む事無く腕立て伏せをしながら答えた自分に対して、同じ学び舎で過ごしている褐色ブルネットの美少年でもある学友も、優雅エレガントな仕草で頷き同意をすると。


『私も入学当初は対抗意識を抱いたけれどね。特に次席の金髪ブロンデス・ハールの彼は、良く知らないと超然とした態度が非常に傲慢に感じられたからね』


『はっはっはっ。過去形のように聞こえるが?』


自分の確認に対して褐色ブルネットの美少年でもある学友は、優雅エレガントでありながらもゆがみを感じさせる笑みを見せて。


『世の中には、どれ程努力を重ねても絶対に追い付けない怪物ウン・ゲホイヤーが居ると思い知らせてくれたあの三人には、心底より感謝をしているよ』


『はっはっはっ。同感だ』


自分が同意を示すと、彼は少しだけ意外そうな表情を浮かべて。


『追い付けないと解っているのに、何故努力を続けるのかな?』


『はっはっはっ。別次元の存在と自らを比較するのを完全に諦めれば、競争相手だと意識をせずに済む』


自分になりに思い悩んで到達した結論を聞いた彼は、褐色ブルネットの美しい顔に真剣な表情を浮かべながら、腕立て伏せを続けている自分を見詰めて。


『自己鍛錬と対抗意識は別物だという訳だね』


『はっはっはっ。少なくとも自分はそう考えるようにしている』


日課の腕立て伏せを終えた自分が床から立ち上がると、褐色ブルネットの美少年でもある彼が先程とは異なり、ゆがみを感じさせない美しい笑みを浮かべて。


『話せて良かったよ。君と知り合えただけでも、入学した甲斐があると感じたよ♪』


手拭いで汗を拭いながら自分も笑顔で応じて。


『自分こそ良き学友に恵まれたと感謝をしている』


彼は明るい笑顔を自分に対して向けると、お裾分けとして持って来てくれた高級菓子を差し出して。


『鍛錬の後の甘いお菓子は格別だよ♪』


差し出された高級菓子を受け取った自分は、一口食べてから満面の笑みを見せて。


『うむ。その通りだ。全身の筋肉が喜んでいるのを感じる♪』

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

筋肉と美少年 @curisutofa

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ