おとなし男子の悪役転生!ヒロインとか興味ないので筋トレしてたのに、呪物な3箱が届いたんですが。
呪物な『箱』登場!
俺はヒロイキ・アークドール。
泣く子も黙る、どっかのマフィア顔負けの黒い噂のたえないブラックマン伯爵家の長男だ。親父の妾の一人から生まれた。
そんな俺にはもう一つ、天から与えられた役割があった。ギャルゲー『ラブ☆きゅんメモリアル~ファンタジック学園編~』に瓜二つなこの世界の、「悪役」兼「当て馬」だ。主人公とヒロインが結ばれる一方、「追放」「処刑」「男娼堕ち」の各種の堕ちルートが展開されるキャラなのだ!
だがそんな運命に漫然と従う気は無いぜ! 前世記憶のある俺は、乱立する破滅フラグを叩き折り、己の運命を切り開くんだ!!
――などと威勢良く叫んでイキり散らすことはない。なぜなら俺は前世から引き続いての陰キ……おとなし男子だからな。寡黙に筋トレだけして過ごすんだ。
目立たず地道にコツコツと。そんな信条でここまで生き延びてきた俺の前に、まさか破滅フラグ……いや、箱が現れるとは!!
学園から帰宅した俺は今『ヒロイキ・アークドール様』などと書かれた三個の箱と対峙している。どれも、主張の強いド派手な箱で、中央の両手で持てそうなのを挟んだ両脇に、人が入れそうなくらい大きなのが鎮座している。
我がブラックマン伯爵家の門前に、手付かずの豪華な箱……
異常事態だ!
なにがって、そこに箱があること自体がだ。
自慢じゃないが、俺の家は実の子供にさえ、食うものもろくに与えない。それどころかバイトや内職で入手したわずかな金品すら躊躇無く奪い去る、弱肉強食の血も涙もない鬼の集う場所だ。そんな家の前に、いつまでもこんな大きな箱が置いたままになると思うか!?
いや、無い。
俺のものは親父のもの、いや、出入りの破落戸のものとばかりに躊躇無く持ち去られる。それが我が家の掟だ。それなのに、こんな目立つ場所に残されているだとぉ……!?
これはきっとあれだ!! 世界の強制力だ!
俺には思い当たるものがある。ついひと月前も、全く同じことがあったばかりだ。あの時、箱は一個だった上に、中から人の気配がした。それで、その時の俺は即座に気付いたんだ。
あ。これって、俺を人身売買か監禁に荷担する悪役にさせようとする、世界の強制力なんだなって。
だから速やかに、俺は箱を抱えて町の警邏隊屯所まで持っていったさ! 中は分からないけど家の前にこんな不審な箱があったんですってな!
そしたら警邏隊の厳つい奴等は、物凄く呆れた感じで「ホントに良いの?」「取り敢えず開けてみたら?」なんて、揃いも揃って俺を悪の道に後押ししようとしたんだ!
あれぞ正しく、世界の強制力って奴だな。恐ろしかったぜ。
そんな感じで、悪役への落とし穴……いや、落とし箱を乗り越えたはずの俺の前に、またもや
しかも、個数も一個から三個に、装飾も可愛らしい包装紙だけからド派手な宝石やリボン付きのラッピングにパワーアップして!!
「っくしゅん!」
ほら見ろ! 箱から声が聞こえたぞ!? こんな呪物は速やかに警邏隊へ提出だ!
白地に水色の小花模様が散った包装紙に包まれて、銀糸で編んだ細いリボンが幾つも重ねて結んである箱。――いや、『くしゃみ箱』を抱え上げる。
「きゃわわっ!」
ほらみろ、やっぱ中に誰か居るし。
「拾得物は警邏隊だ。うん、そうしよう」
細やかな決意を固めたところで、よいしょっと箱を持ち上げる。
「ふわわわわっ!」
白い箱から、俺には無縁なフジョシの声がするが聞こえないぞ! 一刻も早く警邏隊へ引き渡して、俺の穏やか筋トレライフに戻るんだ!!
真ん中の小さな箱は、特に物音もしないけど、これも怪しい。
俺宛にはなってるけど、豪華すぎるんだよ! 紙じゃなくて、艶々キラキラした布に包んであるんだけど!? しかも、宝石を縫い込んだ刺繍までしてあるし、リボンだって見たこと無いうっすくて、玉虫色にピカピカしてて、魔法で保存処理された花まで付けてある!! ナニコレ、どこの王族への贈り物!?
「怪しすぎる……。ううっ、一刻も早く警邏隊に届けなきゃ」
『王族箱』を、片手で抱え上げた『くしゃみ箱』の上にソロリと乗せる。
さて、最後の箱も……と近付いたら
「ヒロイキ様宛て、ですのよ!?」
どこかで聞いた覚えのある声がして、箱の底から脚が生えた。
「―――(なんじゃこりゃあぁぁぁ)!?」
固まってると、『生足箱』が、ズイッと迫ってくる。
その箱には、主張の強いショッキングピンク地に金銀でファンシーな星や月の模様が描かれている。その上、濃い紫色の大振りなリボンが結わえられて、その根本に禍々しい波長を放つ魔石が付けられてる。この波長は……魅了か!?
「さあさ、お早くヒロイキ様のお部屋へ案内なさいませっ!」
『生足箱』がさらに一歩、距離を積めてくる。
「ひっ……」
なんてこった! 強制力がパワーアップしてやがる!! 今回は、警邏隊なんて悠長なことは言ってられない!
「あっ!? ヒロイキ様っ、お待ちになってっ!!」
『くしゃみ箱』と『王族箱』を抱えたまま、脱兎のごとく駆け出した俺のあとを『生足箱』が猛追して来る。
「おい!! 貴様、何をしている!!!」
警邏隊屯所目指して街を爆走する俺の目の前に、ゲーム主人公『あああ』が現れた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます