世界唯一の人間である私と、もちふわひんやりスライム君
リフレイト
1
「なんっっ…………じゃ、こるrrrrrりゃああああぁっ!」
ミーナが、親友と別れて自室に帰ったのは、黄昏時の事だった。赤い太陽の光が、小さな家の窓から差し込み、部屋を眩しい朱に染めている。
6畳ほどの小さな部屋は、まとめていたはずの資料や報告書がばらまかれ、研究用の棚に置いてあったビンなどが落ちて割れていた。
女性らしからぬ声をあげた彼女は、もうすぐ16才になる。かわいらしい顔だちを三方から覆う漆黒のサラサラヘアは、太陽の光を浴びると煌めいて彼女の愛らしさを増幅させている。少女から女性へと変化しつつある、ほんの少しの色気をまとうぷるんとした小さな唇から、先ほどのドスの利いた舌巻の声が出たなど、その場を見ない限り信じる者は皆無に違いない。
健康的で、やや黄色味を帯びた肌は滑らかで柔らかく、ほんの少し衝撃を加えるだけでぷるるんとはじけ飛びそうだ。この国に住む人々と比べると、やや低い身長は175センチほどで体脂肪率は15。すらりとした長い手足は細く、歩くだけで折れそうだと周囲がハラハラ心配するほど。
更に、彼女の魅力について特筆すべきは、その胸元だろう。見事なFカップの柔らかそうなそれは、周囲の青少年に、様々な夢を毎日与えていた。
見た目が可憐な上に、わがままボディで、性格も明るい彼女は、老若男女問わず非常にモテている。とある事情から、ストーカーにも事欠かず、親友兼保護者であるルーシーが、外出する度にミーナを日夜守っていた。
そして、現在。
ミーナの住む2LDKのマンションは、この国一番の結界魔法が施されているためセキュリティは万全である。にもかかわらず、朝、学校に出かけた時とは打って変わった荒れ果てた部屋を前にして、ミーナはへなへなと力なく両膝をついた。
「そ、そんなバカな……。最高傑作のアレを保管していたビンが壊れてる。なんてこった……。ひっどーーーーーーいっ!」
ミーナは、部屋のゴミなど目もくれず、棚から落ちて割れているビンただひとつを凝視し、涙をボロボロと流していた。
彼女が悲嘆にくれる原因となったビンの中身は、水滴ひとつすらついていない。
絶望の中、涙を流しながら幽鬼のように、のっそりと立ち上がる。腰を曲げたまま、両手をだらりと下垂させつつ前腕を前へと伸ばしていった。
「ああ、ビンが出来立ての新品同様のようだわ。ふふふ、一ミクロンの欠片の片りんすらないなんて。まるで、最初からなかったかのよう……。はは……は……。うううう……。長い間、つきっきりで育て、完璧な黄金比率で、せっかく出来てたのにいいいい」
ゴミだらけの床に、土足で上がり込む。
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