女騎士の筋肉は伊達じゃないッ!!

ムタムッタ

お隣さんの女騎士・マールさん

 あるアパートの一室。


「水着を、着たくない……?」


 異世界からやってきたと言うお隣さんの女騎士、マールさんとゲームをしている時のことだった。


「いや、着たくないわけじゃないんだ。せっかくだから夏には君とも遊びたいし……」

「じゃあなんなのさ」

「ほら、私の体ってゴツいだろう? 着たところで似合わないと思うと……ちょっと気が引けてね」


 それを僕に聞いちゃいますか。

 というかそれを相談する相手は僕で良いのでしょうか?


 ゲームを中断して、マールさんの背後に周り、肩を掴む。うむ、今日も凄まじい。


 出会ったはじめに渡した虎の顔がプリントされたTシャツは、女騎士の胸筋で太っちょのネコに伸びてしまっている。


「と、とおるくんっ、なにを⁉︎」

「立派な肩周りから、身の丈レベルの剣が振り回せる立派な両腕だ……!」


 首は僕より太く、逞しく凛々しい。それを隠す紅蓮の長髪が勿体無いくらいである。


「かといって胴は太いわけではなく引き締まった上半身を形成してスリムな印象っ……!」


 元の世界では、鎧は特注だったそうな。

 動きやすさを求めて軽量化しなければならないために、最終的には自分で作ってたとかなんとか。

 単にデカイわけじゃない、ということである。


「そして腰回りから足! うは、僕の足2本分くらいかな! 蹴られたら骨砕かれそうッ!」


 足回りを確認していると、マールさんの顔が険しくなっていく。


「透くん……もしかして楽しんでいるか?」

「うん──ぐぇっ!」


 返事の刹那、マールさんの照れ隠しによる掌底が僕を吹き飛ばした。まさにナイスバルク。


「ほらぁ! 君までそうやってからかうんだー!」


 顔を真っ赤にして、マールさんは叫ぶ。

 屈強な戦士に見えて結構ナイーブとは、マーラさんの友人女騎士による。

 騎士であることすら忘れて、マールさんは頬を膨らませた。


「どうせ私は筋肉ダルマですよーだ!」

「いや、ちょっと、待って……」


 めり込んだ壁から抜け出しながら、マールさんへ弁明する。誓って、からかっていたわけじゃない。

 やはりマールさんの筋肉は別格だ!


「それだけのポテンシャルがあるのに水着姿を恥ずかしがる必要なんてないよ! ナイスマッスル!」

「そういう意味じゃないんだってば〜!!」


 また壁壊れちゃったけど……いっか!


 あぁ素晴らしき筋肉かな。

 女騎士の筋肉は伊達じゃない!!


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