大切な幼馴染に彼氏ができた

理亜

第1話 幼馴染

 俺には幼馴染がいる。

 幼馴染の名前は星宮ほしみやナナミ。

 俺とナナミは幼稚園の頃から仲良しなんだ。


 小さい頃は一緒にお風呂入ったことあるし、一緒に寝たことあるし、連れションもしたことある。

 仲が良すぎて他の生徒たちに『お前ら、付き合ってるのか?』とよく言われるよ。


 一応言っておくけど、俺とナナミは付き合ってないぞ?

 俺からするとナナミは妹みたいなもんだからな。

 異性として見ることはできない。

 たぶん、ナナミも俺のことは異性として好きじゃないだろう。

 

 俺とナナミの関係を簡単に表現すると、友達以上恋人未満ってヤツだな。


「ねぇ翔吾しょうごくん」


 ある日、幼馴染ナナミが俺に話しかけてきた。


「ん? なんだよ、ナナミ? 何かあったのか?」

「えーっと、そのね……翔吾くんに相談したいことがあるんだ」

「俺に相談?」

「う、うん……」


 珍しいな。ナナミが俺に相談してくるなんて。


「その……アタシね、好きな人がいるんだ」

「ほう、そうなのか」

「う、うん……」


 へぇ~、ナナミって好きな人いるんだ。

 全然知らなかった。


 誰が好きなんだろう?

 あっ、もしかして俺かな?

 いや、それはないか。

 

「ナナミの好きな人って誰なんだよ?」

「それはその……」


 俺の問いに、ナナミはモジモジと手遊びをし始める。

 顔は真っ赤になっていた。

 恥ずかしいんだろう。


 しばらくしてナナミは俺の言葉に返事してくれた。


亮太りょうたくんのことが好きなの……」

亮太りょうた? 誰だよソイツ……。あっ、もしかして中村なかむら亮太りょうたのことか?」

「う、うん……」


 中村なかむら亮太りょうたは俺の友達だ。

 アイツとは高校の入学式の時に仲良くなったんだ。


 まさか、ナナミの好きな人が中村だったとはな。

 全然気づかなかったよ。

 

「……アタシの好きな人、誰にも言わないでね?」

「安心しろ、誰にも言わないって」


 俺がそう言うと、ナナミは「はぁ……」と安堵のため息を吐く。

 安心している様子だった。


「そのね、翔吾しょうごくんにお願いがあるんだけど……アタシと亮太くんが付き合えるように協力してくれないかな?」

「えぇぇ……なんでそんなことしないとダメなんだよ。面倒くさいなぁ……」

「いいじゃんっ、アタシのために協力してよっ」

「……」


 中村亮太と付き合えるように協力してほしいのか……。

 面倒くさいなぁ。

 なんで俺がそんなことしないとダメなんだよ。

 

 まぁでも幼馴染の頼みだからな。

 仕方ない、今回だけ特別にナナミに協力してあげるか。


「分かったよ、ナナミと中村が付き合えるようにサポートしてやる」

「本当に!? いいの!?」

「ああ、いいよ」


 俺がそう返事すると、ナナミはキラキラと目を輝かせる。

 嬉しそうだった。

 喜びすぎだろ……。


「で、俺は具体的に何をすればいいんだ?」

「うーん、とりあえず亮太くんの好きな人が誰なのか調べてくれない?」

「分かった。頑張ってみるよ」


 ナナミのために中村なかむら亮太りょうたの好きな人を調べることになった。

 中村の好きな人か。

 俺もちょっと気になるな。



 ◇◇◇




 午前の授業が全て終わり、やっとお昼休みだ。

 俺は椅子から立ち上がって、中村なかむら亮太りょうたの席に向かう。

 中村に駆け寄って声をかけた。


「おい、中村」

「ん? なんだよ、翔吾?」

「お前の好きな人って誰なんだ?」


 俺がそう言うと、中村は目を丸くする。


「なんで俺の好きな人知りたいんだよ?」

「なんとなく気になっただけだ。で、誰が好きなんだよ?」

 

 俺の問いに、中村は小声で返事した。


「誰にも言わないんだったら教えてやるよ」

「ああ、誰にも言わないよ」

「よしっ、なら教えてやる。俺の好きな人は……星宮ほしみやだ」

「え……?」


 中村の言葉に驚いてしまう。


星宮ほしみやって……星宮ほしみやナナミのことだよな?」

「あぁ、そうだよっ。俺は星宮アイツのことが好きなんだっ……」

「……」


 おいおい、マジかよ。

 中村の好きな人はナナミだったのか。


 ナナミは中村のことが好き。

 中村もナナミのことが好き。

 二人は両想いだったのか……。

 

「本当にナナミのことが好きなのか?」

「あぁ、大好きだよっ。アイツと恋人になりたいと思ってる」

「ふーん、そっか……。ならナナミに告白しろよ」

「こ、告白!? 無理無理っ! そんなの絶対無理だって」


 中村の返事に俺は小首を傾げる。


「なんで無理なんだよ?」

「だって……どうせ告白してもフラれるだけだし」

「そんなことないって。お前ならナナミと付き合えると思うぞ」

「ほ、本当か……?」

「ああ、本当だ。俺のこと信じろ」


 今、中村が告白したら絶対にナナミと恋人になれるだろう。

 だって、二人は両想いだから。


「中村、ナナミは結構モテるぞ」

「え? そうなのか?」

「あぁ、先週もこの学校の先輩に告白されたらしい」

「ま、マジで……?」

「あぁ、マジだ」

「……」


 ナナミは結構モテる。

 先週もこの学校の先輩に告白されたらしい。


「早く告白しないと他の男にナナミを取られるかもしれないぞ? それでいいのか?」

「それは……嫌だな」

「なら早く告白しろっ」

「わ、分かったよ。今日の放課後、星宮に告白してみる」

「おう、頑張れ」


 今日の放課後、中村はナナミに告白するらしい。

 たぶん、告白は成功して二人は恋人になるだろう。

 

 あのナナミに恋人か……。

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