コロコロ~びたんっ!

リフレイト

痛い……

 私の恋人は、豹のようなしなやかな筋肉の持ち主だ。騎士の彼は、非常にモテモテ。


 一方、私は、ちんちくりんでお腹がポッコリ出ている。勿論、恋人なんて出来た事はない。


 彼に告白しても断られると思っていた。でも、勇気を出して想いを伝えたところ、答えは「yes」。

 付き合ってから数か月、先月やっと唇を交わして、恋人同士のハグもすませた。そろそろ次の段階かと嬉しくも照れて身悶えしていた時、鏡にうつる自分の体形を見て絶望する。


「ヤバい、お腹を引っ込めなきゃ!」


 早速、バイト先の先輩から譲り受けた腹筋ローラーで、膝コロを始めた。


「うう、胃じゃなくて、胃の外側のお腹が痛い。痛すぎる」


 痛みは聞いている証拠と、自分を励ましつつ膝コロで前に行く。油断して、そのまま思いっきり前に行ってしまい、びたんと体をフローリングに打ち付けた。


「……いっったぁ!」


 まだまだ理想のぺたんこお腹には程遠い。気を取り直して体を起こすと、目の前に、私の無様な様子を見て笑いを堪えきれていない彼がいた。


「勝手に入ってごめん。返事がなかったから。痛そうだね、大丈夫?」


 くっくっと、肩を震わせている彼の姿を見て、恥ずかしすぎて全身が熱くなった。


 涙目で、あたふたと慌てている私を、そっと立ち上がらせてくれた。どうしてこんな事をしたのかと問われ、「お腹をひっこめたくて……」と蚊の羽音よりも小さな声で答えた。


「ふんわりくらいがいいよ。無理して筋トレなんてしないで。ね?」

「でも……」

「そんなに気になるのなら、膝コロよりも効果的な筋トレがあるけど。やる?」


 迷ったものの、筋トレのプロである騎士の彼にお願いした。


 彼から、お腹をひっこめるためにと言われるがまま、あれよあれよと恋人の次のステップに進んだ。


 結局、そのステップに入る前にお腹をひっこめたかったのに、ぽっこり具合のみならず、全身くまなく見られたのであった。




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