異世界で初めての学校生活 パワードスーツ ガイファント 序章 〜弱さを知ることで強さを得る〜
逢明日いずな
第1話 最初の授業「格闘技」
パワードスーツの基礎設計が、辛うじてギルドに認められたジューネスティーンと、魔法の威力の高さを認められたシュレイノリアは、ギルド高等学校の特待生として、入学金、授業料、寮費等、全ての費用を免除されて入学した。
4年後に転移してきたレィオーンパードは、特殊な技能は無く、2人のように特待生になることが出来なかった事から、貯まっていた1人分の費用を、弟分のレィオーンパードに使って3人揃って入学した。
入学直後に、学校の方針により、強制的にパーティーを組むことになったが、そんな中、40代の若いエルフの二卵性双生児と思えるアンジュリーンとカミュルイアンの男女と、種族的には、攻撃力が低いと言われている小柄なウサギの亜人女性である、20代半ばのアリアリーシャ。
ジューネスティーン、シュレイノリア、レィオーンパードは、この6人で組むことになった。
ただ、シュレイノリア以外は、武器を使う戦闘系の職業と見られてしまった事もあり、周囲の生徒から、その見た目の体格からパーティーに誘われる事も無く、結局、6人は残り者同士でパーティーを組む事になった。
大半の入学者は、冒険者として活動を始めた後、ギルドランクを上げるために入学してくる事から、人の強さは見ただけでも、おおよその強さは分かってしまう。
そんなこともあり、子供体型の5人と、体格に恵まれないウサギの亜人は敬遠されてしまった。
他のパーティーとしたら、魔法職であるシュレイノリアには魅力ではあったが、その取り巻きのジューネスティーンと、13歳のヒョウの亜人であるレィオーンパードが、合わせて付いてくる事になると、お荷物を抱え込むと思われてしまった。
3人は、年齢的にも若いこともあって、華奢な体型だったことから、魔法職が手に入るとしても一緒に付いてくる2人を組み込んでも旨みはないと判断された。
しかし、それは、シュレイノリアの魔法を誰も見た事が無かった事から、一般的な魔法職程度なら、付録の子供2人は不要と判断されてしまった。
だが、もし、パーティー決めをする前にシュレイノリアの魔法を見ていたら、そして、ジューネスティーンとレィオーンパードが、剣を腰から下げていた事から、2人は魔法が使えないと思われていなければ、3人まとめてパーティーに誘われていたはずなのだ。
周囲は、3人の見た目から、そう判断してしまい魔法が使えるのはシュレイノリア1人だけだと判断されたことから、どのパーティーも組み込もうとは思わなかった。
ギルドの高等学校では、最初に活動用のパーティーを組む事から始まると、基礎的な訓練を含めた冒険者として一通り必要な訓練もだが、知識も覚えさせられることになる。
そんな中、最初にチェックされるのは、基礎体力であり、そして、武器が破損した時でも戦える体を作る事により、心の余裕を持たせるという理由から素手による格闘技の訓練をさせられる事になっていた。
魔物との戦いをする冒険者にとって、そんな素手による格闘技には生徒である冒険者達からすると、余計な授業だと思われていた。
しかし、学校側としたら、素手でも戦える手段があれば、最悪な条件下であったとしても、わずかな生存率を持たせる。
ギルドとして、少しでも冒険者の生存率を高めるための処置として授業に組み込んでいた。
どの生徒も、あまり、乗り気ではなかった授業だったが、教える側は真剣な表情で生徒達を見ていた。
その指導役である教官は、胸板が厚く、そして、腕も太ももではないのかと言わんばかりの太さを持っている。
明らかに強そうな、筋肉隆々の体型をしていた。
「ふん! 剣を使うにしても、槍でも弓でも基礎体力が無ければ、強い攻撃力を発揮することはできない! そして、武器は壊れることがある! 形あるものは、必ず、終わりがある! それが、戦闘中に起こることもある! そんな時の最終手段として、素手による格闘技だ! 君達には、どんな状況であろうと、生き残る術を覚えてほしい!」
生徒達にしたら、理由は理解できるが、納得できないという表情をしていた。
「格闘技を使うような状況にならないに越したことはないが、武器がダメになったとしても戦う術があると思う事で、心の余裕を持てるようにする。そして、この授業によって、基礎体力の向上を狙っている。腕の力だけで戦うのではなく体全体を使う。剣や槍であれば踏み込む力、弓なら体の安定を保ち、照準がずれないように体幹を鍛える。そんな事も考えつつ授業を受けてほしい」
教官は、格闘技についての説明をするが、生徒側としたら大半が、あまり、真剣な様子で聞いていなかった。
そんな生徒達の様子に教官は面白くなさそうしていた。
「ふん! とりあえず、格闘技について、どんなものなのか理解してもらおう」
そう言うと、教官は生徒達を見渡した。
「誰かに相手を頼みたいのだが」
そんな教官の話を大半の生徒は面倒くさそうに聞いていた。
「それなら、今年は、転移者の特待生が入学してきたらしいじゃないですか」
「そうだよな。自分で金を貯めるでもなく、奨学金で入学したのなら、さぞ、力も強いんじゃないですか」
男子生徒達が、面白く思っていなかったジューネスティーンに、教官の相手を誘導しようとしていた。
生徒達は、自分達で稼いだ金で入学しているが、ジューネスティーンとシュレイノリアは、始まりの村のギルドから、特待生として推薦されており、入学金、授業料、寮費の全てを免除されて入学している。
そして、少ない魔法職なら納得できるので、シュレイノリアの特待生は、周囲も納得できるようだが、もう1人のジューネスティーンは、若く明らかに体の線も細く、筋肉の付き方が明らかに他の生徒より少ない。
見た目も若く、体の線も細く、剣を下げてはいたが、細身のレイビアと大して変わらない曲剣となったら、周囲は、力の無い剣士なので、大剣を振り回す力が無いと見られてしまっていた。
そんな華奢な剣で、魔物の相手ができるのかと思われていた事もあり、どんな理由で特待生となったのか、生徒間では疑問に思われていた。
そんな理解不能な特待生であるジューネスティーンは、貴重な魔法職であろうシュレイノリアを連れていた事もあり周囲から僻まれていた。
そのジューネスティーンを、この屈強で筋肉隆々の教官に、生贄として差し出そうとしていたのだ。
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