ささやかな日常
あいりす
コーヒー瓶
彼と一緒に住み始めてそろそろ1年が経つ。
きっかけは、
「結婚はやっぱりできるか不安だ」
という私の一言だった。
「なんで不安なの?」
彼は悲しむでもなく怒るでもなく、
ただ冷静に私に向き合ってくれた。
「他人と生きれる自信が無いの。」
「自由に好きなことをしていたい。縛られなくない。」
「一緒に住んじゃったらきっとストレスが溜まっちゃう。」
「私がいけないの。」
自分を虐げているようでいて、「あなたとは暮らせない」と暗に言うような酷い言葉。
「そんなの一緒に住んでみないと分からないじゃん。
それに慣れるかもしれないし。
やらないうちからそんなこと言うのは良くないよ。」
それからあれよこれよと言う間に、
親に挨拶に行き、
引越し先を決めて、
気づいたら一緒に寝起きしてご飯を食べていた。
あれから1年。
「久しぶりにコーヒー飲も。
あれ、でもコーヒーってここって決めたのに。
どこよ!もう!」
1人だったら全部の物の場所が分かるのに。
1人だったら家事も自分のやり方でできるのに。
1人だったらもっと自分の好きなことできるのに。
そう思うときもある。
「やっと見つけた。」
「あ、この瓶懐かしい…」
2人暮らしを始めた時に、彼が買った期間限定のコーヒー瓶。
「可愛いでしょ〜。」
と言いながら幸せそうな顔をしてたっけ。
朝起きたらいつも隣に誰かいて。
帰ってきたら温かいご飯を作ったり、作ってあったり。
仕事の愚痴を言いながらご飯を食べて。
疲れた夜は抱きしめてくれる。
1人だと知らなかった感情もたくさんもらった。
2人で生きていくのも悪くないかもね。
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