〖KAC20235〗筋肉無くしてください

センセイ

筋肉無くしてください

「筋肉無くしてください」


ある日突然、目の前に現れ願いを叶えると言った『神』に、私はそうお願いした。


『えっ?』

「お願いします!お願いしますっ!!!」

『えぇ…』


私はこの筋肉が嫌いだった。

小さい頃からスポーツが大好きで、今も一日中外を走り回ってるだけなのに、いつの間にかボディービルダー並の筋肉がついてしまったのだ。


…だから、今日は運が良い。

この筋肉をやっと無くせるんだから!



****



『あーもう…ねぇ、言わんこっちゃない』


私は気づけばそのまま床に倒れていた。


(えっ…何で?!体動かないし喋れないんだけど…)


『そりゃあ、今君『ギリギリ生きれる位の筋肉』だからね』


(えーっ……それじゃあ筋肉無いと何も出来ないじゃん…)


筋肉あるのも嫌だけど、無いのも嫌って、それじゃあ私はどうすればいいの…?!


『どうする?ちなみにこのままか元に戻すかしか出来ないよ』

(えぇ…でもやっぱり動けないし、元に…)


「大丈夫ですか?!」


…その時。

男の人が現れて、私に声をかけてきた。


(イケメンだ!)


「救急車呼びますね…!」


イケメンを見て、私はハッと思い付く。


(今私、筋肉無くなってめっちゃ細いから……これワンチャンあるんじゃね?!)


私にもようやく春が…!


…と思ったけど、それよりもふと頭をよぎったギャグがやりたくてたまらなくなってしまった。


(か弱い少女と筋肉女子…)


どちらがモテるかなんて、私にも分かる。

…けど、


『え…正気?』


心を読んだ神が引き気味にそう言う。


…でも、私はやらなくちゃいけない。

だって渾身の1発ギャグなんだもん。


(お願いします!)


『どうなっても知らないよ…』


「今救急車を…えっ?!」


イケメンの前で私の体はみるみるうちに大きくなり、やがていつもの姿…マッチョな筋肉姿に戻った。

目の前のイケメンが驚く。


「可愛い女の子だと思った?…残念!マッチョでした〜!」


辺りがしんと静まる。


……え?滑った?渾身のギャグが??


と、思った時。


「……って…」

「ん?」


目の前のイケメンは口を抑えて何やら言っている。

驚かせ過ぎたかな…。


「待って、急な筋肉女子尊すぎ……無理…」

「……え?」


目の前のイケメンは、真っ赤になって鼻血をたらしながら、ぶっ倒れてしまった。

そしてそのまま、自分で呼んだ救急車で運ばれて行った。


(何だったんだ……?驚き過ぎたのかな、イケメンの癖に失礼な奴……)


…後日筋肉に大感謝する事になるなんて、この時は全く考えもしなかった。

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