筋肉痛 KAC20235参加作品
七草かなえ
『筋肉痛』
由美は決意した。今年の夏までに体を引き締めようと。
早速スマートフォンからの宅トレ動画を駆使して運動をスタート、更にお菓子を食べない食事制限もスタート。
その結果は。
「痛い……いたぁい……」
由美は翌朝、布団の中で筋肉痛と戦っていた。身体中を巡るに巡る鈍い痛み。動かぬ身体。
いつまでもこうしてはいられない、学校に遅刻してしまう。
高熱に浮かされたかのようにふらふらと布団を出て、学校へと向かったのだった。
「由美ー、おはよー」
「ゆかり、おはよう。いいねあんたは、いくら食べても太らない体質で」
朝一番から友人のゆかりに文句を垂れる始末である。
「ああ、ダイエット始めたんだっけ? まだ効果出ないでしょ?」
「それはそうなんだけどさあ。それより筋肉痛が酷い……全身の筋肉が悲鳴をあげている……」
「あらららら」
ゆかりは何とも言えないような顔をした。筋肉痛に共感ができるかのような、だけどちょっと大げさすぎやせんか、といった感じの表情だ。
「で、でもさ。その分筋肉が発達してるって証拠だよそれ。運動部の男子連中なんて毎日のように筋肉痛だりーとか言ってるじゃん」
「そうかなあ……」
いまいち納得いかない由美である。彼女の目的は美ボディを手にすることであって、バリバリの体育会系になりたいわけではないのだ。筋肉の重さで体重が増えたりする可能性もあるため、あまり喜ばしいことではない。
「いたた……体育見学しよっかなあ……。でも体動かしたいしなあ……」
「へいへい。一口くらいならお菓子食べても良いんじゃない?」
「いらぬ」
差し出されたビスケットを丁重に(?)お断りして。
「こんなんじゃへこたれない。今日も宅トレ頑張るんだから!」
由美は気合いだけは満点の宣言をしたのだった。
その後由美は筋肉痛に負け、今日一日くらいはと宅トレをサボったことでダイエットに挫折するのだが、そんなこと本人は知らない。
筋肉痛 KAC20235参加作品 七草かなえ @nanakusakanae
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
七草氏の書架/七草かなえ
★21 エッセイ・ノンフィクション 完結済 1話
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます