筋肉姫からは逃げられない

ムネミツ

第1話 筋肉姫からは逃がられない

 「それじゃあ、もうそろそろ皆ともお別れか」


 城の謁見の間で、衛兵も王様も女王様も皆マッチョなプロテイン王国の皆が

涙を流して消えかけて行く俺を見送る。


 「や~だ~っ! ゆ~しゃ、おうち帰っちゃや~だ~~~っ!」

 「俺だって、お前と会えなくなるのは嫌だっ!」


 胸の茶色い熊のアップリケがはち切れそうな白ドレスを着てティアラをピンクの髪の上に被ったマッチョな美少女が大泣きする。


 プリンセスのチヨだ。


 消えゆく俺の前で、床に寝転がり城の床が割れる程の地団駄をするチヨ。


 王様達は退避する、いや逃げるなよマッチョ共。


 異世界から消えかけてる俺に何を見せてるんだとツッコむ事もできない。


 ……ごめんチヨ、もう俺には何もできない。


 俺はプロテイン王国から消えて地球に戻った。


 「……げっ!」


 何の因果か、俺は線路へ落とされた時に戻って来ちまった!


 死にたくない! 誰か助けてくれ!


 「ゆ~しゃ、あぶな~~い!」


 パリンと空間が割れ、熊が鮭を取るようにチヨが俺を抱き上げ空気を蹴り飛ぶ!


 「鳥だ!」

 「熊のパンツだ!」

 「いや、マッチョガールだ!」


 周囲の人達が叫ぶが俺にはどうしようもできない。


 俺はチヨと共に空高く舞い上がった。


 「えいっ! おうち帰る~っ!」

 「ちょ! 一体何がっ?」


 俺は一体、自分の身に何が起こっているのかわけがわからなかった。


 チヨが空中で、ユンボのアーム張りに隆起した腕で虚空を叩けば次元が割れた!


 「ただいま~♪ ゆ~しゃ、持って来た~っ♪」

 「いや、ここプロテイン王国のお城かよ!」


 俺はチヨと一緒に、床がボロボロの王城に戻って来ていた。


 「チヨとゆ~しゃ、ずっと一緒~♪」


 サラリととんでもない事を言うチヨ。


 「姫が勇者を連れ帰った、愛の奇跡じゃ! 結婚式じゃ!」


 何処からか王様が出て来て叫ぶ!


 「ゆ~しゃ、だ~いすき~♪」

 「うん、俺もだよ♪」


 俺はもうチヨからは逃げられないと覚悟を決めて、彼女と結婚した。

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筋肉姫からは逃げられない ムネミツ @yukinosita

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