裏路地の占い師ロウィーナ・ダイン

月杜円香

第1話  美少女占い師

「お探しの物は、遠くにあります。間違って売られたのではありませんか!?」


「あの金の腕輪は、妻との婚礼の腕輪だ。妻が無くなったと言ってもう三日だ!!妻は、あの腕輪を宝物だと喜んでいてくれていたのに……私は売りなどせぬ。使用人の誰かが持ち出したのか!?」


 ロウィーナの前に座っていた、男が勢い良く立ち上がった。


「お客様、落ち着いて下さい。今すぐに、北上をする行商隊をお探しください。顎に髭の生えた者が、責任者をしているはずです。

 腕輪は、昨日その者がある人から買いました」


「見えるように言うのだな」


「これだけは、約束して下さい。腕輪が戻ったら良き領主に戻られると」


 男は、首をひねった。


「私が、お前如き占い師位、どうとでも出来る事を分からせる必要があるかな!?」


「どうともなりませんわ、お客様。たかが、奥様の腕輪を探しに、この王都まで、いらしたのでしょう?たかだこんな裏路地の占い師の私をどうするのです?私はその前に逃げます。追って来ても逃げます。逃げ切れる自信はありましてよ」


 少女は、クスリと笑った、

 窓から入って来る日の光で、淡い金の髪が透けて見えていた。

 机の上には、腕輪の行方を占ったカードが散乱していた。


 知力のある緑の瞳で畳み掛けるように言った。


「お客様、早くしないと馬車が出てしまいますわよ」


 男は、10歳以上も年下の小娘に促されて、部屋を出て行った。


 ロウィーナは、大きく息をついた。


 ここはタナトス大陸の西域、古王国の1つのドーリアである。

 国土の南部に、大陸唯一の最大砂漠を有するこの国は、オアシスも多数あった。

 王都のアスタナシヤは、海に面しておりドーリア1の規模のオアシスだった。


 ロウィーナ・ダイン(17歳)の家は、王都の表通りから外れた裏路地にあった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る