第16話 ものすごい達成感
会社の社会保険証を手にした時。
本当に本当に嬉しかった。やってやったぞ、と、拳を握りしめた。
ものすごい達成感で、泣きそうになった。いや、ちょっと涙は出てた。
はい、当たり前のことを何をそんな大層な、と思われることでしょう。
解ってます。解ってますよ、そんなことは! 日々まじめに働いてきた、税金を納めてきた皆々様には、当たり前のことだということは!
でもですねー、十年以上、私はこれを手にしてきてなかったんです!!
あ、夫の扶養だったってことですよ。自分で払ってなかった、控除されてきた身の上ってことです。保険証は持ってましたよ。
ですがですね! 私にとっては、かなりかなり、かーなーり! 大きな前進だったんですよ!!
だって国民健康保険って高過ぎ!!!!
自営業の人、凄すぎる………色々経費にできるとかは聞きますが、それにしたって税金関係、本当に難し過ぎるぅ…………。
頭の悪い私は、会社に雇われていた方が断然安全だと、よーくよく解っていますとも!
あと純粋に働き口があること、社会保険証をもらえるだけの収入が見込める、会社に契約してもらえるって事実が、すごく嬉しかった。
専業主婦は仕事としてみなされないし、どんなに家事スキルが優秀でも稼ぎじゃない。
もちろん、家事や子育て、介護に価値がないなんて考えはない。私はむしろそれらに重きをおいてきたし。
でもやっぱり、社会に出て、労働して、お金を稼げるって、価値のあることだと思う。
というか、社会保険証を手にした時の、うわぁ、私のだーっていう感動は、何か、社会的に認められたような、どこか地に足がついたような、誇らしいような? 気持ちだった。
本来なら、子育てや介護でも、していること(仕事)が認められるという実感があった方が良いのでしょうけど。日本では、こうした家の仕事に関しては、孤独に陥りやすい気もする。
会社で働くこと、お金を稼ぐこと、家事をこなすこと、子供を育てること。
本当は全部、当たり前じゃなくて、全部が大変なことで、皆お疲れ様です、なはずなのになー、とか思ったり。
でも超嬉しかった保険証。やっぱりどこかで働けてるって証明書が欲しかったんだなぁって実感した。
実際は非課税世帯だし。契約もパートナーだったし。時間もフルタイムじゃなかったけど。ここが私の最低ラインだ、と思った。こっから、ちょっとづつ上がっていこう、と。
だって何をやったって現状よりスキルアップはするから。どう考えても。
でもまずは、その土俵に立てた。ステージに上がれた。それだけでも、私にとって大きなこと。
達成感と期待。人生立て直し計画ノートのやるべき項目に、勢いよく線を引けた瞬間が、今も勇気に繋がっている。
夫がいないこの異世界に転移して半年した頃の出来事だった。
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