第28話 和徒が目覚める 2 ―クラエア視点―
私の名前は、クラエア・ベーゼルグスト。
ベーゼルグスト家は、城塞都市アーガルムの領主を支える5大貴族の一つ。
私は、その現当主の孫娘。
5大貴族にはそれぞれ管轄する分野が存在し、当家の管轄は『学術』。
『学術』とは、教育分野や研究機関などを指す。
また、都市内にある大図書館も運営している。
この大図書館には、一般公開されている書物の他に、限られた者にしか
それらの書物には、なんらかの事情で隠された歴史の真実が書かれているなど、
私はベーゼルグスト家に連なる者として、それらの書物を閲覧する権利がある。
なので、『31人の勇者』が現れたと聞いた時から勇者に関する情報を重点的に調べていた。自身の権利を利用して未公開の情報まで。
そこから得た知識は、本当に公開してはいけないものがいくつかあった。
だから私は、本当に信用できる者にしかこれらの情報を渡さないと決めた。
私が敬意を
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
<従者契約1日目 初夜ってこんなにすごいの?>
ああ……、カズト様に抱きしめられている。
カズト様が捜索活動から戻ってきた日の夜。
私はカズト様の自室に呼ばれていた。
「カズト様……」
「僕に任せてくれるかい」
「はい……」
カズト様と口付けを交わす。
ほんの少しだけ互いの唇を重ね合わせただけなのに、全身が熱を帯びてくる。
緊張と喜びが混ざり合って、何も考えられない。
抱き上げられ、そのままベッドに寝かされる。
「そうだ。始める前に聞いていいかな。明日の予定は?」
「ありません」
即答した。仮に予定があったとしても、全部キャンセルさせる。
カズト様に朝まで愛して欲しかったから。
「そっか。よかった。じゃあ、
えっ? 質問の意味が分からない。
「―――えっと、ありません」
「そっかぁ。じゃあ、
えっと……。どうして?
「―――無い、と思います」
「オッケー。じゃあ、3日間で!」
「??」
「安心して。最初は優しくするから」
「は、はい」
―――ここから地獄のような天国に、私は連れて行かれた。
―3時間後―
「はぁ……はぁ……。あ、あの、カズトさまぁ……。そろそろ休憩を……」
行為が始まってどれくらい経ったの……。
私は未経験だったので比較はできないけど、カズト様はすごく慣れていると思う。
カズト様、
身体のすみずみまで汗でびっしょりとしている。
でも、全然寒くない。逆に、身体が
息も乱れっぱなし。呼吸ができない。
「カズト様……。カズト様……。お願いで、す。どうか、休憩を……あああああ」
止まらない。止まってくれない。
ずっと優しいけど、止まってくれない。
初めては痛いって聞いていたけど、そんなのウソだったのね。
性行為がこんなにも気持ちのいいものなんて……。
他の勇者様が性に
「お、お願いしま……はああああああああああ」
―7時間後―
「あっ、あっ、あっ…………。ぇ……んん!? あれっ、ここは―――」
気を失っていたみたい。身体が動かない。
全身が快楽の海に飲み込まれているようで、私にできるのはただ身を任せて
今も快楽の……、えっ、今も!?
「ま、まだ……。まだ続いているのですか……?」
「ん、起きた? 疲れたら眠ってていいよ」
その言葉で、自身の置かれている状況を把握した。
え、なんで……。これって、ずっと続いているの??
自覚すると共に、強烈な快楽が押し寄せてくる。
「ああああん、ちょ、んあああ、と、待って……はぁ……くださああああああああ」
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
<従者契約2日目 もう殺してください>
おかしい。この人おかしい。
ずっとなの。ずっと。ずーっとヤリっぱなし。
しかも、激しいの。昨日とは全然違う。
昨日のはなんだったの? あれって、手加減してたの……?
行為を続けながら、ご飯を食べた。全部口移し。
行為を続けながら、お手洗いに行った。全部見られた。
行為を続けながら、お風呂に入った。他の人にも見られた。
身体がダラリとして、まったく動かない。
手足の感覚が無い。あるのは快楽の熱だけ。
「ああああああああああああああ。ああああああああああああ。あああああああああああああああ。あああああああああああああ」
もう言葉はしゃべれない。出せるのは叫び声と泣き声だけ。
声がかすれているから、綺麗な声でもない。
ただの生物的本能。そう、死ぬ直前のうめき声に近い。
「あああああああああああああコロああああああああああああしああああああて」
必死に訴え掛ける。
しゃべれないから、目で訴える。
殺して! 殺してください! もう無理です。もう無理なんですって。
「あああああああああああムあああああああああああリ、ああああああああああ」
もう堕ちてます。身体が堕とされてます。
全部感じているの! もう、触らないで!
本当に感じているの! もう、動かないで!
気持ち良すぎるの! 苦しいの! 怖いの! 助けてよ!!
「大丈夫、大丈夫。まだまだいけるって」
無理、無理無理。
どうしてそんなに動けるの? わからないよぉ。
なんで? なんで? なんでだって!?
「クラエアも気持ちいいでしょ?」
良すぎるんだって! 良すぎておかしくなってるんだって!
「ははっ、泣いている顔も美しいね」
泣いているの、私? もうよく分からない。
たぶん
「今日はずっと激しくするから。
「いやあああああああああああああああああああああああああああああああ」
―――お願いします。もう、殺してください。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
<従者契約3日目 えへへっ身体も心も堕ちましたぁ>
「うんとぉ……カズト様ぁ~。こうですかぁ?」
「そうそう、もっと
「はーい。よいしょ、よいしょ……これ、私も気持ちいいですぅ~」
「自分だけ感じてちゃダメだよ、クラエア。ちゃんと奉仕しないとね」
「は~い」
「うん、上手だよ。えらい、えらい」
「やったぁ~。えへへっ」
うれしいなぁ~、カズト様に褒められちゃった。
優しく頭を撫でてもらえるって、もう~最高~。
目が覚めたら、身体が軽~くなってましたぁ。
身体がポカポカしてぇ~。心もポカポカしてぇ~。
力がみなぎってくるの! さすがはカズト様~。
「もっと、もーっと、教えてくださいねっ、カズト様!」
「いい子だね、クラエアは」
「褒めて褒めてぇ~。次はどうしたらいいですかぁ~?」
「そうだねー。じゃあ、口でできるかな?」
「食べちゃうんですかぁ~?」
「違うよ。今の君は本当に食べそうで怖いよ」
「えへへっ、また褒められちゃったぁ~」
「―――やり過ぎたか、これ」
「あーん」
今日は、いーっぱい教えてもらえました。
性行為っていろいろあるんだね! 私、びっくりです。
こんな世界があるんだぁ~。
もう、カズト様から離れられないよぉ~。
ん? でも、大丈夫かぁ。
だって私、従者だもん。
カズト様にすべてを捧げた従者だもん、ねっ!
はぁ~、愛しています、カズト様!!
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
柔らかな日差しを受けて、私は目を覚ました。
ひとりでベッドに横たわっていた。
全身べとべと。汗と白いのと、後はもうよく分からないのでぐちゃぐちゃ。
でも、私は美しかった。
身体は汚され、心は壊された。
だけど、それは神の祝福だったの。間違いないわ。
体中からあふれ出す力。万能感。
今なら何でもできる。心の底から断言できる。
だってこんなに―――素晴らしい疑似神核を頂けたのだから。
扉が開いた。カズト様が戻ってきたみたい。
疑似神核を得たことで、カズト様との繋がりを常に感じている。
だからカズト様だって分かったし、あの絶大な神核の力強さも実感できる。
「やあ、気分はどうだい?」
「―――晴れやかな気分です」
満面の笑みで応える。
私の笑みに、カズト様も目を細めてうなずいてくれた。
ただそれだけで全身に電流が走ったかのように喜びが
「ああいいよ、その表情。本当に気に入った」
「ありがとうございます。すべてカズト様のお陰です」
「僕が与えた疑似神核も気に入ったかな?」
「はいっ! これ以上の幸せはもうありません」
「ははっ、それは良かった。どうかな、全力を見せてみてよ」
カズト様の指示に従い、内なる疑似神核に意識を向ける。
その力を―――解放する。
「!? その髪……」
「どうされました? あっ、これ……は」
私の紫色の髪が―――真っ赤に染まっていた。
赤い……どこまでも赤く、深い色。まるで真紅の赤。
「―――面白いな。どういう原理だ? なぜ君だけ……?」
私は知っていた。隠された知識から。
大図書館に
それは、我が家系の始祖となられた御方の手記。
「これは、我がベーゼルグスト家の特徴です。かつて勇者アーガルム様の従者だった初代当主も、髪の色が変化したそうです」
「そうなのか……。クラエア、君には聞きたい事がいっぱいある。というより、知っている事をすべて教えて欲しい」
「はい、すべてお話します。勇者についての隠された知識、それに―――我がベーゼルグスト家に与えられた役割があることを」
「役割? 何かあるのか?」
「ございます。我々が管理する聖遺物を勇者様にお渡しする役目がありました。普通ならすぐにお渡しするのですが、今回は勇者様が31人もいらっしゃったので、お渡しする相手を選ばなければなりませんでした」
「なるほど。それを僕に?」
「もちろんです」
「ありがとう。それにしても―――その疑似神核、凄いね!」
そう、凄すぎる。
私の疑似神核は―――おそらく最強。他とは格が違う。
私こそが、最強の勇者カズト様に仕えるにふさわしい最強の従者。
でも、私以外にも候補はいる。思いつくはあの人。
だから―――――。
「カズト様、以前作成した従者候補のリストを覚えていますか? あのリストを活用してください。差し当たっては―――次の従者は、あの人を」
「ああ、分かっている。そっちとも
「そうですね。あれもカズト様のお役に立つかと」
そうして、勇者カズトは本格的に勇者としての道を歩みはじめた。
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