第25話 side京歩、四人目の泥棒

♦︎♢♦︎♢♦︎


「……なあ」

「何?」


「なんで俺たちはビルの屋上に30分もいるんだ?」

「トラップに掛かった泥棒の元に瞬時に行くにはこの位置が一番いいんだよ」


「へえーなるほど〜ってなるか!ボケ!」

「うるさいなあ、本に集中できないじゃないか」


「討伐者相手に俺たちみてーな学生の張った罠が通用すると思ってんのか!?」

「思ってるよ、割とマジで」


「そもそもさっきから変な本読んでるしよー」

「変な本じゃなくてギガンティックの悪魔理論ね」


「んだよそりゃ!」

「簡単に言えばギガンティックっていう学者が発表したとある理論を巡った

サスペンス小説」


「とにかく!俺は単独行動するからな!バトンちゃんと守れよ!」

「はいはい、10分後には戻って来てね」


京歩のパ—トナーが下に降りた2分後、悲鳴が響いた。


「どうした!?」

京歩は急いで下の階を見に行く。


「おっ」

するとそこにはパートナーを右手で締め上げている執事のような服と貴族の仮面をつけた金色の長髪をもった男がいた。


「バトンはそっちです、か!」

貴族男は瞬時に距離を詰める。


(見えなk)

貴族男は肉眼では視認できないほどの速さで蹴りを入れる。


「ぐはっ!?」

「とっと渡してもらいますよ」


京歩は蹴り上げられた拍子にバトンを手放してしまう。


「?」

貴族男はバトンをキャッチしようとするが手が近づいた瞬間引っ張られるように

バトンが京歩の手元に戻る。


(なんらかの異能を使ったのか……?)

貴族男は異能を警戒して一旦距離を取る。


(さて、どうしようか……)

京歩は考える。


(見た感じ相手はスピードタイプ、しかも視認できない程の速さと来た)


「考える時間は与えません、よ!」

貴族男の拳が腹に入る。


「ぐはっ」

京歩はそのまま倒れて地面に伏した。


「よくも、まあ……受験者を、こんなに容赦なく殴れるな」

「私は厳しい事で有名ですから」


「あっそ」

京歩はむくりと立ち上がり、パートナーの元に向かう。


「パトーナーを心配するなんて、実にいい子ですね、けど……」

貴族男が前に立ちふさがる。


「それを許すとでも?」

「そんなことも分からない馬鹿じゃないので」


京歩は必死に拳を繰り出す。

「私がこれを避ける事は分からなかったみたいですね!」


貴族男はそれを容易く避ける。

「いや分かってましたよ?だから地面に付与しといたんです」


「一体なんの話……」

次の瞬間、貴族男は天井に刺さってしまうような勢いで高く飛び上がった。


「なっ」

「油断大敵、ですよ泥棒さん」


「ぐあっ!?」

男は突然の事に受け身が取れず仮面にヒビが入ってしまう。


「そうか、思い出したぞ」

「?」


「君をどこかで見たことがあると思っていたんだ、君麻野家の人間だろ?」

「……だったらなに?」


「それなら今の現象にも納得がいく、君の異能は一部の界隈では有名だからね」


「たしか……磁力だっけな」

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