51~60

№51

仮題 ふみ/ぐり吉たま吉

……またこう、ちょっとでも内容に言及すると、そのままネタバレになる系ですね。ツライ話かというと結構、救いがあるとおもうんですよ、僕はね。何不自由ない人生だったのに孤独に死んでく人って多分いますよ。まあ一方で孤独が目的であり孤独が手段であるという人もいますね。なんにせよ、最期を選べるというのが幸福だと思います。誰だってふと訳わからない内に死ぬの、イヤじゃないですか。



№52

カフェ&レストラン〜ヒカル/ぐり吉たま吉

……なぜこう、同じ作者さんを連続で並べたかというと。参加順に貼り付けたからもあるのですが、上記の作品と非常に趣が違うからです。ほかにも読んだのですが、なかなか多彩です。それを強調したかったので。で、この作品、非常に男らしい。暴力とかメカとかオトコの趣味が出てくるから、の男向けではないです。同性の筈の僕が軽く引くくらいに男らしい。濃い。

なんとなくな考えだけど。現実で男の一人称というのは基本的に〝俺〟だ。頭ん中の男の主語は、攻撃的で荒々しい〝俺〟である状態がナチュラルだと思う。僕になったり、私になったり、勿論する。けどそれはあくまで一時的か表向きか謙譲で、男は基本〝俺〟で考えて生きている……と思う。だからこの、青臭いほど「俺」な主人公が、モノを語るこの作品はけっこう好きだ。



№53

さんたさんのやみのてがみ/DITinoue(上楽竜文)

……こう、現代ホラー的な作品においてですが。「現実・日常」と「そうでないもの(恐いモノ)」の対比が、ハッキリしてるものってありますよね。で、その恐いモノが現実を侵食していく過程がいかに恐ろしいかという所があったり。この作品の場合は違って、恐怖のシンボルは結構ちょくちょく、分かりやすく出てくるんだけども、現実のほうもハナから多少ヒビが入ってる感じです。

とある恐怖パーツがとびぬけて怖いというより、シーン暗転が多かったり、理不尽パーツが理不尽なまま放置され、すぐ次が出てくるので恐怖を煽られます。ここで読者が一応信頼できる観察者とか不文律があると息を詰く合間があるんですが、ないです。ポーズボタンのないホラーゲームという感覚。



№54

迷える少女の世界再生記/猫野早良

……めちゃくちゃ読まれると思うがなぁ。導入から、丁寧に一人の少女が歩き疲れて何やかやでいちおう元気を取り戻して、それからどうなる……と順にたっぷりじっくり置いてかれないように描いてあるんですよ。すごく微笑ましいし。これが1話目2話目でたくさんキャラが湧いてくると、ひょっとしたら疲れるし、異世界やSFは読者さんに他の説明も追ってしていかなくちゃいけない訳ですよね。そこで読者がオーバーフローしそうな気になって離れちゃう、ってこと往々にありそうなんですが、ゆったり物語に入れます。どうもこの少女、元は超管理社会的世界から来たぽい。続きめっちゃ楽しみ。



№55

私の「幸せ」は帝国への憎しみと、アナタたちの「幸せ」です。────天使より/支倉文度@【魔剣使いの元少年兵書籍化&コ

……ペンネームが見切れてるのに伝わる不思議。タグにリョナがある。オレ分かるかなぁ。と思ったら猟奇性が強調してあるか、というと全くそんなことはない。単純に火炎とか猛毒を生身に喰らったらこうなる、ぐらい。なんか逆に納得。このぐらいが当たり前で、アッサリ死ぬのが不自然な気すらしてくる。猟奇的って謎な概念だね。書籍化作品を出されてるだけあって、キャラかっこいいしストーリーもアツい。あとは好み。復讐モノにもいろいろあるな、という点で。



№56

異世界でスプーン曲げの超能力を使った結果、色々と深読みされてしまっている件/へぶん99

……おっ、異世界転生じゃーん、元気? 一旦死んでるから転生でいいのかな。さて「異世界にホニャララ持って行って現実世界とのギャップを楽しむ」とか「異世界に無い職業や商売しちゃう」ってもうオーバーフローし始めてるというか、レッドオーシャンじゃないかと思う。しかしこれは一味ちがう。『!』のである。目の前でサイコキネシスされたら、我々現代人だって困惑する。なまじ我々はマジックとか科学のトリックとか疑うので、まだ落ち着いたものだ。いやしかし異世界の常識人の困惑はどんなものだ? こうなってく、という面白いハナシ。いい味の主人公を中心にコメディも秀逸。地力の賜物だろう。うーん嫉妬。



№57

悲恋の大空/暴走機関車ここな丸

……こうなんていうのか、形式が、脚本風? SS? セリフの前に発言者がフルネームで書いてある。そういえば某掲示板雑談系でSSをやったことがあるが、極端にいえばあんな風。僕はその時、小説というより即興芸、リアルタイムのレスありきの言葉遊びと思っていた。今それはもう保守的にも感じる。僕も変わったな。が、好みは当然分かれるだろう。この好悪の差はおそらく、深い。ユーザー間の交流に影響を及ぼす。水と油は言い過ぎだろうか? マァ、かき混ぜてない浴槽程度には層が分かれる。かくして、この繰り返しでSNS化と分断は進む。でも僕はまだ、ボーダーラインに立ってる。作品の感想はある。それは悪い感想ではないのだが、自分の立ち位置がわからないので保留したいのだ。

……ゴメン、これ通じるかな。通じててほしい。



№58

中林さんの天球儀/すたりむ

……めちゃくちゃ好みやないか! 面白いやないか! 二十年書き続けてらっしゃるとのことでもっと作品あると思う。是非、衆目にさらしてほしい。恒例の挨拶で「おっ、異世界転移じゃーん、元気?」しようと思ったらこの世界では、転移してくるヒト自体は他にもいて、それもどうもクラスごと学校とかのパターンではなく結構来るぽい。ああ、これ以上も言いたい。言えないのがもどかしい。キャラも文体も非常に好みだ。ライトすぎず、しかしヘヴィに固執するでもなく読みやすい。そして中林さんかっこよすぎ。完全片思いで惚れる。知と美と情熱を兼備する女性には勝てる気がしない。完璧はずるいぜ、という魅力。



№59

チートなんざクソくらえ!!/文月 澪

……おっ、異世界転移じゃーん、元気? なにか見覚えのあるペンネーム? いえ勘違いだったらごめんなさい。いや、ほんっとこういうの大好き。あのー、異世界いっぱいあるんですが、人の原罪のない異世界ってなかなか無いですよね? 相手が魔物だろうが人間だろうが、手段はともかく人間は、他から奪って生きます。スローライフ? でも草食ってますし、肉も食いますよねぇ。その事実を否定しないで、「他人から、ただただ与えられるチートなんてしったことか」、という姿が非常に胸を打ちます。ピンとこない方は、日本が全世界の富の七割以上を占める国々のひとつで、自分がその国民の一人として享受しているものを想像してください。日本人チートみたいなもんです。



№60

魔術師ニンカの随想録/筥崎俊朗

……著者様、某陰陽師シリーズ大好きでしょうか? まあそういう小ネタはおいといて。一行がゴブリンを倒しに行く、というだけでここまで中身が詰まってて登場人物がわちゃわちゃ楽しくやる話を書けるというのは、稀有ではないでしょうか? ただグダグダおしゃべりをするだけではなく、緻密な設定上でのやり取りが繰り広げられる。じゃあ討伐自体もたのしいわちゃわちゃの、ただのオマケで終わるかというと、全くそんなことはない。道中のグルメ要素やらもあって、何かもう、トッピング全部乗せである。純粋に濃い。とりあえず読まれたいという作品を書くだけなら、この方きっと簡単にできると思う。どれか書くのラクで読みやすいトコを前面に押し出しちゃって、パカパカ更新できる作品を提灯にするとか。

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