深夜の散歩

Totto/相模かずさ

深夜の散歩

 部活が終わって家に帰り着いたのは午後6時半。

 それから母の用意してくれた夕食を食べてお風呂に入って、課題もやらずにベッドに入ったのは午後9時かな。部活で動きすぎてめちゃくちゃ疲れてたから秒で寝ちゃったんだと思う。

ぱちっと覚醒したのは午前3時だった。


「お腹すいた」


 顧問の先生があまりやる気がある方じゃなくて、ゆるゆるとした雰囲気の陸上部。それでも県の成績がいいのはどうしてかしらね?

 みんな体を動かすのが大好きで、雰囲気はいいけど練習はハードって他の部活やってる子に言われた。私たちは楽しんでやってるだけなんだけどね。


  ぐ〜 きゅるる

 

 悲しい音を立てるお腹をそっと撫でてみる。女子高生には不要な硬さ。

 悲痛な声を鎮めるべく台所に忍び込んだけど冷蔵庫の中には朝ご飯のパンがあるだけ、これに手を出したら母に怒られる。

 部屋に戻りジャージに着替えて財布を握った。

 深夜のお出かけにドキドキする心を抑えつつ、玄関のドアをそっと閉めて鍵をかけた。両親は二階で寝てるから気づかれない。


 程よい都会と田舎の中心にあるうちの街。我が家は駅から徒歩10分にある新興住宅地ってやつ。建売で買ったって聞いてる。

 コンビニまでは5分もかからないし、私が本気で走ればもっと早い。

 でも静かな夜だし星でも見ながらゆっくり行こう。


 コンビニで菓子パンとコーヒー牛乳を買って齧りながら歩く。

 そういえば、先輩があんぱんと牛乳って最高の組み合わせとか言ってたっけ。明日はあんぱんにしよう。

 お小遣い、足りないな。

 そんなことを思いながら空を見上げると、星が異様に煌めいて見えた。

 あんなに輝いてる星、あの方向にあったっけ。

 パンの最後のひとかけらを飲み込み、コーヒー牛乳で口内を潤す。

 星が、近づいてくる。

 次第に大きく見える星。

 何が起こってる。

 玄関の鍵を開け、すぐに入ってドアを閉める。


 それから私は深夜に外に出ることをやめた。

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深夜の散歩 Totto/相模かずさ @nemunyo

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