黒い影

天宮ユウキ

深夜の夜道

 深夜の夜道を私は歩いていた。すると前から足音が聞こえてきた。こんな時間に誰だろう? と不思議に思いながら前を見ると……そこには誰もいなかった。おかしいなぁと思っているとまた後ろから足音。そして振り返るとやっぱり誰もいない。

 そんなことを繰り返しているうちにいつの間にか後ろにいるのは私になっていたのだ。


「ぎゃあああああ!!!!」

「うわああああああ!?」

「きゃっ!!」


 突然、悲鳴が響き渡った。何事だと思って声のした方を見ると、そこにはクラスメイトがいた。そのクラスメイトは全身を震わせて怯えていた。


「どうしたの?」

「お、おばけ……!」

「え?」


 私は辺りを見回してみたけど何も見えない。というより真っ暗でほとんど見えないし。ただ街灯があるおかげで少しだけ周りが見えるだけだ。でも、おばけなんてどこにも見当たらない。一体どこを見て言っているんだろう。


「ねぇ、どこ見て言ってるの?」

「ここだよ! ここ!」


 そう言いながら指さしている場所をよく見てみると……そこには何もなかった。いや、正確には私の足元にいた。小さな黒い影のようなものがそこにあったのだ。


「あ……」

「ね? いるでしょ? どうしたらいいの……」

「それは……」


 私は考えた。これはきっと夢なんだと。だから何か適当に答えれば目が覚めるはず……。よし決めた。ここは正直に言おう。


「そっとしておくしかないと思うよ。たぶん疲れてるんだよ。気づいたら消えてるよ」

「本当?」

「うん、本当だよ」

「よかった」

「じゃあ帰ろっか」


 私たちは再び歩き出した。

 ………………

 あれからどれだけ時間が経っただろうか。まだ帰れる気配はない。おかしい。知ってる道なんだから帰れるはず。なのに帰れていない。すぐ下にいる小さな黒い影を見る。暗くて見えないはずにニヤリと笑ったように見えた。怖い。怖すぎる。早く帰りたい。私は泣きそうになった。その時だった。


『キャハハハッ!』


 笑い声が響いた。


「ひぃっ!?」

「ひっ!?」


 私たち二人は驚いて同時に飛び上がった。


「な、何今の?」

「わからない……」


 急すぎて頭がついていかない。なんだろう今の。誰かの声みたいな感じだけど聞いたことのないような声で全く知らない人のものだった。


「ねぇ今の声って……?」

「し、知らないよ……」


 この子は本当に何を言っているんだろう。私は呆れた顔でその子を見た。するとその瞬間、女の子の顔が青ざめた。まるで幽霊でも見たかのように震えている。


「ど、どうしたの?」

「い、今あの子笑ってたよね?」

「え? あの子?」

「ほら、そこに立ってる小さい黒い影のことだよ」

「え?」


 私が恐る恐る振り向くとそこには誰もいなかった。


「え? あれ? さっきまでここにいたのに……どうして?」

「ねぇ、大丈夫? 具合悪いんじゃないの?」

「え? ううん、別に普通だよ」

「そ、そうなの? それならいいんだけど……」


 そう言うとその子は安心したのかホッとした表情を浮かべた。そしてまた一緒に歩き出す。

 しばらく歩いているとようやく家が見えてきた。


「あ! やっと着いたね! ありがとう!」

「ううん、気にしないで。それよりも気をつけて帰ってね」

「わかった! ばいばーい!」


 元気よく手を振りながらその子は走り去っていった。その姿を見送った後、私も自分の家に帰宅する。

 はぁ~今日はいろいろあったなぁ。もう寝よう。そう思ってベッドに入った時だった。


『キャハハッ!』


 笑い声が聞こえた気がした。

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黒い影 天宮ユウキ @amamiya1yuuki

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