第7話 王子様は腹が黒そう?
「彼女は?」
と、王子様の一人がおかーさんに問いかけた。流れ的に私のことを聞いているのだろう。
「わたくしの娘であるアリスです。なにぶん平民であり、礼儀作法など勉強しておりませんので何か失礼があるやもしれませんが……」
「あぁ、構わないよ。公式の場でもないしね。よろしくねアリスちゃん」
なんだかずいぶん気安いなぁと考えていると、おかーさんに脇腹を突かれた。顔を上げて挨拶しろと小声でアドバイスされたので、その通りにする。
「お、お初にお目にかかります。アリス・リッテリトスでございます。え~っと、おかあさん――ハイリス・リッテリトスの義理の娘になります」
微笑みながらたどたどしい自己紹介をする私であった。だって笑顔を作らないと顔が引きつりそうだし。ゲーム本編が始まってないのに攻略対象二人とエンカウントとかどういうことなの……。
「ほぉ……」
と、誰かが感嘆のため息をついた。さすがはヒロイン、初対面での
王子様の一人が優しそうに微笑みかけてくる。
「何とも美しいお嬢さんだね。……寡聞にして『銀髪』であるアリスちゃんのことは知らなかったのだけど、ハイリス殿の秘蔵っ子なのかな?」
「…………」
これは、あれかな? 下手な返事をすると『銀髪の娘を隠していたとは! けしからん!』とおかーさんが批難される展開かな? なにせ銀髪の人間は人を超える魔力総量だからね。
さすがに無いとは思うけど、敵対勢力から『銀髪の娘を隠しているとは、謀反を企んでいるに違いない!』と難癖を付けられかねないのだ。
おかーさんに視線で確認を取ると、話しても良さそうなので説明をする。……まぁ、本当のことを話しても信じてもらえなさそうなのがアレだけど。
「実は、昨日から銀髪になりまして」
「……にわかには信じられないな」
ニコニコと人好きのする笑顔を浮かべながら、口調は少しだけ鋭くなる王子様。うん、ちょっと腹黒な気配がするぞ?
しかしこっちとしても嘘は言っていないし、嘘をついて誤魔化すわけにもいかないのでどうしようもない。――にっこりと。裏表のない笑顔を浮かべてやり過ごそうとする。
「……へぇ」
面白い子だ、と、王子様の心の声が聞こえた。ような気がした。なんだか愉快なオモチャを見つけたような目をしているような気が?
と、私と王子様のやり取りにおかーさんが割り込んでくる。
「詳しい説明は私がさせていただきます。……しかし、人には聞かせられない内容でありますので……」
「ハイリス殿が言うなら、よほど重要なのだろうな」
「はい。ですので、これより陛下に謁見を賜りまして経緯の説明をしようかと」
……陛下と謁見?
国王に会うの? これから?
何それ、聞いてないんですけど。
陛下に会う服がない――いや今はドレスだった。おのれおかーさん、これを見越してドレスを着せたな私に?
「なるほど。重要案件ゆえ、私たちに話すかどうかは陛下が決めると? 王子にすら話しにくい内容であると? ならば致し方ないな」
なにやら勝手に納得して引き下がる王子様だった。いやちょっと止めてくれません? こんなド庶民が陛下に謁見するとか問題あるでしょう?
助けを求めるようにもう一人の王子様に視線を向ける私。……なんだか同情を込めた目でふるふると首を横に振られてしまった。諦めろということらしい。
なぜ?
なんでこんなにイベント盛りだくさんなの? まだゲームは始まっていませんよね?
うぅ、お偉いさんになんて関わらずに引きこもって研究漬けの毎日を送りたいだけなのに……。
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