第5話ヒロインさん、ゲットする
「……ん~っと、どういうこと?」
私の説明を聞いて首をかしげるおかーさんだった。
うん、気持ちは分かる。私だって逆の立場だったら首をかしげるもの。というか当事者なのにまだ信じられないし。
「話を纏めると、創造神様から祝福されて、銀髪になっちゃったのね?」
「う~ん、そうなるのかな?」
「……そんなこと、ありえるのかしら? いくら何でも創造神様なんて……でも間違いなく銀髪だし、魔力総量も激増しているっぽい。普通ならありえない……それこそ『神の奇跡』でもなければ……」
むーんむーんと悩むおかーさんだけど、ふと思いついたように顔を上げた。
「創造神様はアリスちゃんの右手を包み込みながら祝福を与えてくださったのよね?」
「うん、そうだね」
「……ちょっと右手を出してみて? 手の甲を上にする感じで」
「? こう?」
「そう。で、ちょっと魔力を流してみて?」
手に魔力を流す。魔力操作の練習によく行われるものだ。まずは手のひらに魔力を集中させ、その後は人差し指や中指に分けて流すことで操作を上達させると。
その最初の段階。
手のひらに魔力を集中させると――、光った。手の甲が。ぴっかーっと。
光が収まったあと、右手の甲には複雑な文様が浮かび上がっていた。
もちろん私は入れ墨なんてしたことはないし、生まれつきこんな文様が刻まれていたわけではない。
「
「すてぃ……?」
「これは、マズいかも。とりあえず、魔法を展開すると光る感じかしら?」
試しに生活魔法を使ってみると……やはり光った。ピカピカと。
「この聖痕が魔力を増大させているとか? まさか後天的な増設ができるなんて……。とりあえず、右手は隠しておかなきゃいけないわね」
おかーさんが倉庫として使っている部屋に行き、かなり激しい物音を立て始めた。たぶん何かを探しているんだろうけど、その部屋の後片付けをするのは私なんだろうなぁ。
「あった。これよこれ」
おかーさんが持ってきたのは黒い革の手袋。なんだか殺し屋とかが付けていそうなゴツさだ。
「これなら鑑定も透視もはじき返せるから。とりあえず、人に会うときはこれをつけていてね? つけてないときは魔法を使わないように」
おかーさんの説明を受けながら手袋を受け取る。ちょっと大きめだけど不自由する感じではない。たぶんおかーさん用の手袋なのだろう。
まぁ私が使えるのは生活魔法だし、外で使う機会はほとんどない。泊まりがけでの冒険なら使う機会も多いらしいけど、私は日帰り冒険者だものね。
しかし、見たこともない材質だ。質感は爬虫類っぽいけど、ただの爬虫類の革が鑑定や透視の魔術をはじき返せるわけがない。
「おかーさん、これ、材料は何?」
「ん? 古代竜のお腹の皮よ?」
「…………」
サラッと告げられた事実に開いた口が塞がらない私だった。値段が付けられないというか、そもそも有力者で独占されて市場に出回らない系の素材だ。
絶対なくさないようにしよう。どこかに置き忘れたりしないようにしよう。
固く決意した私だった。
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