眠れない日

鳴代由

眠れない日

 どうにも悪い感覚がして、目を覚ました。

 悪い感覚というのは、ただよくない夢を見ただとか、夜中のうちに急に気温が下がって寒くなっただとか、そういうのではない。もっと奥、自分の身体の内側から、その悪い感覚が湧き上がってくるようなものだ。

 このままではよくない、とふらつく足に力を入れて、私は立ち上がる。もう一度寝てしまうより、気分転換に出かけよう、と。そうして私は、外に出た。


 私がこうなってしまったのには、いくらか心当たりがある。例えば、ここ最近、眠くて眠くてたまらないこと。夜、決まった時間に布団に入るのだが、眠りにつく時間、というのはまばらだ。日付が変わる前に眠れることもあれば、朝方まで眠れないこともある。それでいて、日中に睡魔がやってくるかと聞かれたら、そうでもない。ただただ寝不足の日が続いている、というわけだ。

 それに加えて、ここ最近、よく頭痛がするようになった。寝不足のせいだと言われたらそうかもしれない。だが、それだけが原因だとは言えない気がするのだ。こう、頭が重たいだけでなく、ふわふわするような。頭で考えたことが、次々とどこかへ行ってしまうような。そんな不思議な感覚のする頭痛だ。


 こういうことが何日も続いて、ぐっすりと眠れる日も少なくなっていた。そんな中、今日は珍しく眠れたと思ったのに、これだ。この悪い感覚は唐突にやってくる。慣れると思っていても、ずっと慣れることはない。私は眠気を抑え込むように、あくびを我慢した。


 そのときだ。目の端に、チカチカとした明かりが映った。ああ、ついに終わりかと思った。寝不足と頭痛だけに留まらず、目眩までやってきたか、と。だが違った。目眩なんかではなかった。いっそのこと目眩のせいにしてしまいたかったが。


 私の目の前には、星が広がっていた。星空ではない。星だ。手が触れそうな距離に、星がある。でも触れられない。私の周りを、ぐるりと星が囲んでいた。


 あまりに不可解な出来事に、私はなぜか笑うしかできない。これも、悪い感覚の影響なのだろう。それでいて全てをこれのせいにしてしまうのも、もうすでに私が正常な思考を持てていないことの表れなのかもしれない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

眠れない日 鳴代由 @nari_shiro26

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ