第13話 新しい暮らし
その晩は安いビジネスホテルに泊まる凪沙と
ブッフェスタイルの朝食をとるとすぐに不動産屋を何軒か回る。車がなくとも何とか生活できて契約時にも色々面倒ごとがなさそうな安い物件を見つけたのですぐに契約した。一階だが今は贅沢は言えない。入居まで五日かかると言うのでその間はレディースルームありのネットカフェ生活だ。
次に仕事を探す。
そしてついにアパートに入居する日になった。凪沙は
翌朝
「わあっ、凪沙お母さんみたい。でなかったら旅館の朝ごはんみたい。すてき」
「はは、母親の真似事を十一からやってたからね。今思えば色々経験しといてよかった」
「明日は私が作るからね」
「えええ」
凪沙はわざと困惑したような表情を見せる。
「まっ、何そのリアクション」
「ふふっ、じゃあ藤峯家ご息女の腕前見せていただきましょうか」
翌日作った
新生活からふた月近くが経った。凪沙や
そしてここ函館で初めて新年を迎えようとする日の夜、二人は初詣に出かける。深夜まで営業する路面電車に揺られ少し遠い神社へ向かった。境内の階段でカップルらしき男女が目の前にいて、同い年くらいで凪沙よりも長い髪のきれいな女性が、酔っているのかウザいくらい大声でけたたましく喋っていた。挙句は滑って階段から転げ落ちそうになって相手の男性に支えてもらい、何がおかしいのかまた大声で笑う。その声が凪沙には耳障りだった。
カップルらしい男女が騒々しく遠ざかって行ったあと、二人は静かに賽銭箱へ五円玉を投げ入れ鈴を鳴らす。凪沙はこの生活がいつまでも続くように祈った。いや、中古のポンコツでいいから車が買えますように。社員に昇格出来ますように。もっといいアパートで暮らせるようになりますように。
一方であっさりとお祈りを済ませた
「何お願いした?」
「ん、世界平和」
「はっ?」
そうしれっと答えた
「だって世界中のみんなに平和が訪れるんなら私たちにだって平和が訪れるはずでしょう。私、自分たちだけじゃなくてみんなに幸せになって欲しいの」
満面の笑みを
おみくじを引いて焼き鳥を食べながら内容をあらためる。凪沙は小吉、
◆次回 第14話 望まぬ来訪者
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