ACT.1 アンチヒーロー
『ーー何者だと聞いている!!』
「だからぁ、怪しものでは無いと言っているでしょ?この仏頂面はともかく、私は神の使いです!崇め祀られて当然な高位の存在。いわばあなた方、下位の種からすれば神様と同格と言っても過言ではないのです!さぁ、拝み倒してくださいな!フフフ』
『頭のイかれた不審者と特定。戦闘許可を執行、陣形を組み次第、取り押さえよ!』
・・・やはり、問答無用でNOと言い続けるべきだった。トラブルメーカーでしかないこの幼児。
《数十分前》
神の力により、スムーズに転生を終えた。
術者なりの配慮で着地地点は屋内。埃が充満し、家財はくたびれているものや原型を留めて無い物ばかりで人はおろか、生物が巣食ってる感じもない廃墟。
初めての世界だけに土地勘もなければ、周囲に何が生息しているかも分からない、何の知識もない現状にまずは冷静に物事を対処する必要性がある中でこの配慮は助かる。
「うっわ、汚すぎですよここ!私、これでも神様直属の使者なんだからそれなりの扱いしてくださいよっ」
既に冷静じゃない旅の供という名の足手まとい(仮)に神経が逆撫でされるが、気にしないようにしよう。
「ここがどういう場所なのかの特定をしろ」
「だから言ってますよね?私、これでも神様の使者なんです。君よりメチャクチャ位が上なんですから崇めてお願いするのなら教えてあげますよ?」
「しろ」
「神様以外の命令には従えません。君の言う事なら絶対に聞きません!でも、崇めてくれるなら考えてあげなくも・・・って、聞いてますか!?」
頼る相手を間違えた。
こんなポンコツを主に持って来るぐらいなら自分の感覚に頼った方が間違いが無さそうだ。
木造の古びた扉に手をかけ、ゆっくり、慎重に開ける。
開放早々に感じたのは心地の良い風。
自然豊かな緑に彩る木々が視界を飛び込み、身体の負をデトックスするかのような暖かな恵みが全身を覆う。
久しぶりの感覚だった。それは多分、子供の頃以来感じた事が無いように思える程、新鮮なものだった。
「君、もう少し用心深くなった方がいいですよ?知らない土地で何があるかも分からないのに、行動が一辺倒だと私が苦労しますからっ」
正直な思いを吐露したい所だが、今は心に留めておく事にしよう。
ウザ。相当に性格が歪んでいるなコイツ。
どのタイミングでしばくかだけ考えておくとしよう。
「科学が発達してるように思えないな。この匂いといい、植物の進化に限界がないように見える」
「へぇ、結構分かってるじゃないですか」
「あ?」
「そんな怖い顔しないでください。鋭い感受性と環境把握能力をお持ちのようだから、これでも褒めてあげてるんですっ。少しはありがたみをもってですねーーゴニョゴニョ」
小姑のような奴だ。いや、これは俗に言うとこの構ってちゃんと言うやつか。
長ったらしく自己の評価を表現する事に疲れないのか?
なるべく、隙を与えないようにするのが合理的だな。
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