レクイエ夢

西山華耶

1話完結

スタスタスタ、

隻眼痩躯、

白い支那服に身を包んだ男が

確固たる足取りで歩いてゆく。

背後から静かに付き従う私。


古い商店街を抜け、

角を右に曲がると

そこにはストーンサークル。

宅地造成中に発見され、

市民憩いの公園として

保存の運びとなったらしい。

由来を記す石碑に刻まれた

日付はハッキリしないが、

おそらく大正末期から昭和初期。

不思議なことに。

珍妙なナリをしているはずの

我々の姿は誰の目にも

映っていないようだ。


そうか。

忘れていたよ。

ねえ輝さん。

アンタが着てる白い支那服、

そりゃ死装束だもんねえ。

あっはっは、

ナニを今頃、

と。

振り返って茶目っ気たっぷりの

笑顔を見せたその男、

北一輝。

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レクイエ夢 西山華耶 @jazzykeiko

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