嘘か?
羽鳥 雲
完結済み
深夜の散歩...もう何年続けているだろうか、理由は数年前にさかのぼる......
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~数年前~
高校性の時だった。俺はどうしようもなくテストの点数が悪く親に怒られ、頭を冷やすために外へ出たところだった。家の前の道路を挟んだ向こう側に女の子?がうずくまっているのが見えた。俺は急いで駆け寄ると
「君、大丈夫?」
と声をかけた。
しかし、返ってきたのは
「あ゛......ヴヴ...」
人の声ではなかった。しかし、
「...すきかも......」
「あ゛?」
一目惚れ......だった。
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そして俺はそこから毎日のように彼女の場所へ通い続けた。しかし...
「お前を悪霊として除霊する」
「は?」
彼女は霊だったみたいだ。しかもちょうどそこにいる彼に除霊されるところだった。
「君...彼女が見えるのか?」
「え......は、はい」
反射的に答えてしまう俺、
「そうか、名は...?」
俺が答えられずにいると
「簡潔に伝える。彼女は悪霊だ、だから今から除霊する。...はぁ......だから今すぐそこをどいて立ち去りなさい」
気づけば俺は彼女を守るように彼の前に立ちふさがっていた。
「君は彼女の何を知っているのかね?」
「何も知らない、だけど......俺は彼女が好きだ、だから...だからこれから知ればいい!!」
俺は勢いで彼女への気持ちを口に出してしまっていた。
「...は?君、本気っで言ってるのかね...?」
「...ぁ、...本気です!」
「......まぁいい、明日この住所に来なさい。来なければ今週中に彼女を除霊する」
彼は考えるそぶりを見せつつ俺に紙を押し付けてきた。
「名刺...?」
しかし、彼は名乗ることも疑問に答えることもなく闇夜に消えていった。
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次の日俺は彼が渡した紙の通りの場所に行き、小さな小屋の前にたどり着いた。
「おまえ!そこで......ああ、昨日のか...何をしている、さっさと入れ」
こうして俺はそのまま彼の小屋の中へと入った。
「こ、ここは?」
「ここは私の仕事場だ。昨日見て分かった通り除霊師をしている」
周りを見渡すと薄暗いながらもあちこちに光が見える。俺がずっとその光を見つめていると興味深そうに
「この光が見えるのか...ほう?なかなかの目だな」
「え...?」
「なんだ、知らなかったのか......」
そこから俺は霊をはじめて見たのはいつだ、など詳しく聞かされた。まぁ、初めて見たのは今回がはじめてだったのだが......そして俺は彼からなぜ自分は除霊師をやっているのかと今回来た依頼について聞いた。
「つまり、彼女が事故をおびき寄せているんですね...?」
「ああ、そうだ。だから俺は彼女を除霊しなければならない、ただ...」
「ただ?」
「お前が彼女を成仏させるというのならば考えんでもない」
そんなこと、何も知らない俺に......
「できるはずがない、そう思っただろう?だからだ...お前、俺に弟子入りしないか?」
そう言って彼はにやりと笑う。
「......は、はい。よろしくお願いします」
「...よろしくな、あと明日もここに来なさい」
「はい...」
そう言って俺は小屋を離れ自宅を目指す。彼の笑った顔は少しぎこちなかった気もするが彼女を救う手がこれしかないのならばしょうがない、そう思いながら俺は自宅へと帰るのだった。
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次の日、俺は彼の言葉に従い小屋へと向かった。
「おはよう、早速だがこれを見てくれ。...これは彼女に関する情報だ」
その紙には彼女の年齢,名前,死んだ理由まで書かれていた。
「それで、」
「どうすれば...だろう?残念だが、お前に除霊方法を教えるつもりはない。まぁ、教わるつもりもないだろうからな。この紙を見て何か思うことは?」
「それは......」
今まで彼女のことが好きで彼女のことが知りたかった。...はずなのに言葉に詰まった。
「ふん、明日までに除霊させるための説得を考えておけ。できなければもうここには来なくていい」
来なくていいい...つまり思いつかなければ彼女を除霊するのだろう......
「明日も必ず来ます」
俺はそう言い残して小屋から出て行った。
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そして朝。
「おはようございます」
「ああ、思い浮かんだんだな。言ってみろ」
俺は思いついたことをすべて彼に語った。
「...いいんじゃないか。今日の夜、彼女に伝えに行くぞ」
「もういけるんですか?」
「準備はもうできている。それとも...不安なのか?できなければ僕が除霊するから安心しろ」
それは彼なりの冗談であってほしいと思いながら彼と彼女の場所へ向かった。
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しかし、その場所に彼女はいなかった。
「居ない...?」
「資料でも見ただろう、ここは彼女の事故現場だ。しかしいつもと時間が違う、違う場所に行ってみよう。車に乗れ」
「はい」
こうして俺は彼に連れられ彼女がいそうな場所へと行くのだった。
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彼に連れられ着いた場所は付近の公園だった。
「あ、」
「見つけたか?」
しかし僕が見た彼女は人であるか判別が曖昧なほど黒い靄に覆われてしまっていた。
「早く行くんだ、彼女が完全に悪霊となる前に」
「はい」
そして俺は今日、彼に語った通りに彼女に話した。少し恥ずかしくなって目を伏せてしまった。
そして、
「見てみなさい、」
彼の言葉にふと目線を上げるとそこには何もいなかった。
彼が続ける。
「彼女は無事成仏した。君も,僕も仕事は終わりだ...家まで送るから今日はそのまま帰りなさい」
「...はい」
俺は彼に家まで送ってもらい家に着いた。
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そしてこの時間、いつも彼女に会いに行っていた時間になった。俺は本当に彼女が成仏したか確かめるつもりで家を出た。
そして道路の向こう側を見ると......
そこには彼女と彼がいた。
思わず俺は目を疑ってしまった。さっき除霊したはずなのに...彼は無事成仏したといっていたはずなのに......何故?
そこで俺は気づいた。彼女を成仏させようとしたものの自分は途中で目線をずらし、成仏したかは彼が教えてくれたということに......
考えるのをやめ、ふと前を見ると彼がいない。急いで彼女に駆け寄ると、彼女はおびえたポーズをした。背筋に悪寒が走り、急いで振り返る。そこに彼がいた。
「あらら、見られちゃったね。そこの霊は僕の妻だ。君が彼女が好きだ、なんて言い出すからびっくりしちゃったよ」
見られちゃった、なんて言いながらも彼は少しうれしそうに見えた。彼が続ける
「彼女は僕が殺した、些細なことだった。ただ...その殺し方に問題があった。除霊術を悪用してしまってね、そのせいでで彼女は霊になった。だから僕は同業者が彼女を見つける前に彼女を消す必要があった」
そこまで話すと彼は一息ついて
「けれど君が彼女を見つけてしまった。だから僕は考えて君に彼女を成仏させたように見せた。これで邪魔は入らない、と思った......もういいだろう」
と言って彼は除霊術をはじめたようだった。
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「これで終わりだ。君、次近づいたら君まで殺すことになってしまうから僕の気が変わらないうちに去りなさい」
彼女を守らなきゃ......でも足が震えたように動かない...何も、何もできない...
数分後、彼が呟く
「チッ、逃げたか......君も、もう帰りなさい...二度と会うことはないでしょう」
そう言い残して、彼はあの日みたいに闇夜に消えていった。
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その後、俺は彼が言った「逃げた」という言葉を信じて探し続けている。
いつか彼女と無事に再開できることを望みながら......
嘘か? 羽鳥 雲 @kumo28
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