第4話 多元者
瞳が3つある女性は勇者ルネアをじっと見ていた。
彼女は壊れてしまった人を助けて欲しいと言った。
それが青年だという事は分かるのだが。
すると後ろのドアが開いて、2人の相棒達が入ってきた。
1人は賢者ガターだ。冷静沈着で色々な事を教えてくれる。
1人は戦王ジョニーだ。少し能天気だが戦いとなると勇猛果敢で頼りになる。
「来たか」
「こりゃ一体どういう事になってるんですか勇者」
「そりゃこっちも聞きてーぜこの文明の発達力やばいぞ、こんな所と戦争したら、こちらの国は亡びるぞ」
「大丈夫だそんな事にはならない」
勇者ルネアが断言すると。
「揃いましたね、金本さん、扉を厳重にしまってください」
「はい、多元者様」
カネモトは扉を閉めると何度も鍵をしめていた。
「では説明します。勇者ルネアさんがいた世界を異世界とすると、こちらの世界は現実世界とします。その2つが神様のミスで融合しました」
「それは聞いたが」
「なんだってええええ」
「ありえんぞ」
他の2名は聞いていなかった。
「神の中で内乱が起きているのだと思われます。そして神々がその裏切り者達がこの世界にいると断定し、逆切れしたのです」
「ふむ、ちと分からんが、神達は異世界と現実世界で何をしようとしてたんだ」
「恐らく完全なる融合、無にする事です」
「てことは皆死んじまうだろ」
「いえ、死にません」
賢者ガターがそう言っても多元者は断言する。
「宇宙の歴史の記憶になるだけなのです」
「意味不明なんじゃが」
戦王ジョニーは頭がおかしくなりそうになっていた。
「この宇宙には無数の世界があります。1つの命に1つの星があり、1つの世界があると思ってください」
「……」
「異世界など無数にあるという事です。はたまた言えば現実世界も無数にあるという訳です」
「あのー意味不明なんですが」
勇者ルネアが尋ねると。
「ふむ」
多元者は首をひねった。
「簡単に言えば、異世界が蟻の数程あって、現実世界も蟻の数程ある、その一部と一部を無にして数を減らす計画だったのかと」
「神様は勝手ですやん」
戦王ジョニーが思わず突っ込むと。
「基本神様は神同士で決議が取れればいいのです、このワタクシも神の人柱になろうとしていましたから」
「もうそれ以上は聞かない、私達は何をすればいい」
「簡単に言います。1人の壊れた青年を見つけ出し、説得し連れてきてください、ワタクシが治します。別の人間が治してしまうととんでもない事になります」
「どうなるんだ?」
勇者ルネアが尋ねると、多元者は3つの瞳を閉じらせ考える。
「スーパーヒーローて分かりますか、いえ、失礼、ようは勇者が自由に空を飛んで宇宙に飛んだり、うん説明が下手かな、うーん、ようは滅茶苦茶強くなって自由すぎて手につかない赤ん坊が暴れる状態です」
「それ、滅茶苦茶やばいじゃないか」
「そうだなやばいな」
「赤ん坊が最強だったらもう手がつかんぞ」
勇者ルネアと賢者ガターと戦王ジョニーが納得した。
「でもアスペルガー症候群とは1人1人違う力を持っています。今の人達はそれを障がいと決めつけて、くくりつけてしまっています。中には劣っていると思ってしまう人もいるでしょう、異常だとか、でも理解ある所では力を伸ばし活躍している人もいるのです。ですが、差別は取り払う事は出来ない、それを壊れた青年がいや、彼の名前を明かしましょう、山仁くんが気づいてしまったら、一般人は皆殺しにされるでしょう、それもゴキブリを潰すように」
「その、差別とやらの気持ちは分かる、私の世界では女性は冒険者になれなかった。私が勇者になる事で変わった。その青年に人殺しの苦しみを与えてはいけない」
「残念ながら苦しみはありません、それが当たりまえだと思ってしまうからです。人間が鶏肉を食べるような感覚です、人間がゴキブリを潰す感覚です。それとまったく同じになるという事です」
「それってめちゃやべーだろ」
賢者ガターが叫ぶ。
「だから、連れてきてください、あなた達の魔法と技術があれば、説得できるはずです。それと空にある宇宙船ですが、数時間後に侵略を開始するでしょう、この地球上にいるであろう裏切り者達を探しに、逆切れでこんな事しないで欲しいです本当に」
多元者が怒り心頭に感情を表すと。
「気になっていたんだが、多元者さんの3つ目はどういう原理なんだ」
「これはある種の生まれつきという奴です。そのせいで変な力に目覚めてしまいましたが、そのおかげで、こうしてあなた達と出会えました」
「そうか、それなら良かった」
「カネモトさん、外に3名を案内してあげてください、以後護衛は禁止します。彼女達独自に動かしてあげなさい、自衛隊の各員に彼女達の写真を渡しなさい、絶対に攻撃してはなりません」
「了解であります。多元者様」
「では勇者ルネア、賢者ガター、戦王ジョニー、あなた達の国王を殺してしまい申し訳ありませんでした。理由は気になっているでしょう、彼はワタクシ達の文明の力を欲し、それを悪用しようとしました」
勇者ルネアの脳裏の中にその可能性は少なからずあった。
これだけの技術力、巨大な建物、その技術力を欲しくないと言えばウソになるだろう。
きっと国王はとんでもない理由を突き付けてきたのだろう、例えば、戦争を仕掛けるとか、色々と考えられる。
人間とは素晴らしい物を見ると、その素晴らしい物が欲しくなる。
勇者ルネアだってそれは同じだ。
だが分別は存在する。
それ以上求めてはいけないのだと。
だが国王はきっと自らが偉い立場だと勘違いをして、カネモトさんに色々と申しつけたのだろう。
その結果、カネモトの銃と呼ばれるもので射殺されたのだ。
「すまない、色々と勘ぐっていたようだ。ヤマジンという青年を探そう、賢者ガター、戦王ジョニー、これからはガターとジョニーと呼ぶ、命を駆けてくれるか!」
「もちろんだ。勇者ルネア、僕の魔法がどこまで通用するか分からないがな」
「ふ、この俺様にぃー任せろ」
勇者パーティ3名は多元者に挨拶すると出発した。
もちろん頑丈に鍵を駆けられたドアをカネモトが開けてから。
その後スマートフォンと呼ばれる機械を3人に渡され、使い方を教わった。
シェイク・ザ・ワールド〜異世界と現代世界が融合する時神々が世界を滅ぼす為侵略を始めた!?~ MIZAWA @MIZAWA
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