雪どけ間近に花は咲く
おじぃ
第1話 雪国のガソリンスタンド
「らっしゃいやせー!」
厚い雲が17時半の幻想的な夕焼けを覆い隠し、昼間の麗らかな陽気は嘘だったかのように急激に冷え込み気温5℃。夕方になると冷え込むのは晴れていても同じだが、この日は普段より寒暖差が激しく、気持ちがどんより沈みそうだ。
国道沿いにある家族経営のガソリンスタンドで働く20歳の青年、
手指は赤く
東京、
健一は給油を終え客に代金を請求すると、無言でゴールドのクレジットカードを差し出された。
「あっ、すみません、うちカードは使えないんです」
「あぁ、そうなの。これだから田舎は」
「申し訳ありません」
田舎で悪かったな。
内心苛立った健一だが、それでも真摯に応対。
「まったく」とおもむろに差し出された万券を受け取り、釣り銭を用意するためその場を離れ、迅速に札と小銭を数えて客のもとへ小走りで戻った。
しかし客の言うことはもっともで、いまどきクレジットカードが使えないのは不便だと、健一自身も感じている。
カード会社に手数料を取られるのがネックだが、釣銭用の両替手数料や盗難に遭うリスクを考えると、カードの導入も良いのではないか。
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