深夜の散歩ついでに買い物を頼まれた。

TN太郎

深夜の買い物にご注意

深夜の散歩は日課だ。

でも、今日は少し遠いルートを通っている。

理由は、同棲している彼女のヒロコから、お遣いを頼まれているのである。

なんでも、


「今日は、晩酌がしたいから、これに書いてある物を買ってきて欲しい」


とのことだ。

街灯の下で立ち止まり、ポケットに入っているメモをもう一度確認する。


 __________

| さけ(ビールがいい)|

| ヨーグルト     |

| なんでもいいから  |

| ラーメン(カップ麺)|

 ――――――――――


ヨーグルトをつまみに、ビールを飲む気だろうか。

本当に変わった趣味をしている。


3つめの角を曲がると、200mほど先にコンビニが見える。

さっさと買って、早く帰ろう。


「いらっしゃいませ!」


店員(大学生ぐらいだろうか)の明るい挨拶で、今が午前0時23分だということを忘れかける。


メモを見ながら、ビール2本、ヨーグルト飲料、カップ麺を2個かごに入れていく。

僕のつまみには、柿ピーを買っておこう。



アパートの前まで帰ると、入り口の前に見慣れないグレーのワゴン車が止まっていた。

車を避けて、アパートに入ろうと思っていたら、僕が帰ってきた方向と反対に走り去っていった。他の居住者の車だろうか。


「ただいまー」


・・・


返事が無い。


「買ってきたよー」


・・・


返事が無い。


ヒロコがいない。


はっ!


急いで引き出しを確認する。

2人で積み立てていた結婚資金の通帳が無い!印鑑も!


何が起こっているのか、理解できない。

強盗か!?さらわれたのか!?

さっきのワゴン車か!


警察に電話だ!

スマホをポケットから出したときに、一緒に買い物のメモが落ちた。

とっさに拾い上げた時にメモの字に目が釘付けになった。

 __________

| け(ビールがいい)|

| ーグルト     |

| んでもいいから  |

| ーメン(カップ麺)|

 ――――――――――

そういうことか。

くそ、だまされた・・・

急に、悔しさと悲しさがこみ上げてきた。

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