伝説の英雄譚
ゴロー
伝説の英雄譚
プロローグ 終焉からの始まり
荒廃してしまった大地、朽ち果てた森林、空は分厚い雲で覆われ、もう何年も太陽の姿を見ていない。
多くの生命が消え失せ、死臭が世界中に広がっていた。
この世界は、終焉を迎えようとしていた。
かつては多くの自然が地表を覆い、透き通った美しい海が生命を育み、多種多様な生物が生き生きとしていた。
しかし、活気あふれる世界にはもう戻ることはできないであろう。世界を滅茶苦茶にした元凶を打倒したあとでも……。
激戦の爪痕が色濃く残る戦場にただ一人佇む男がいた。
世界を終焉まで追い込んだ元凶『邪神』を倒した男。
世界中から英雄と呼ばれるにふさわしい男。
しかし、そう呼んでくれる人たちはもう全員いなくなってしまった。
ぼーっとしていた佇んでいた男−英雄に、ぼんやりとした光の球が近づいてきた。
“……心の準備はできたかい?”
光の球は英雄に確認した。
「うん、決めた。時間がかかってごめんな?」
“いいよいいよ、いくらでも待つさ。私もこのままは嫌だからね。もう君に頼るしかないんだ”
光の球は軽い口調でそう言った。
英雄は疲れた顔で力なく笑った。
「……オレもお前に頼るしかないんだ。これからやることにはさ。」
―邪神に破壊される前の、美しい世界を取り戻す―
今まで誰も成し得なかった偉業。不可能へ挑戦する決心。
そして…………自身の未来を賭ける覚悟を。
“もう一度確認するけどいいのかい?仮に成功して世界が荒廃する前に戻っても、君にはつらい結果になるかもよ?”
「……何度も説明してもらったからわかってる。でもいいんだ。俺はみんながいた世界を取り戻したい」
決意を固めた英雄の表情に迷いは微塵も見られなかった。光の球は申し訳なさそうに話した。
“……君には苦労をかけてばかりだね”
「水臭いこと言うなよ、これからも頼らせてもらうんだからさ、相棒!」
そういって英雄は、疲れていた表情から満面の笑みに変わった。かつて多くの人々に安心感を与えた自信に溢れた表情を浮かべながら。
“それじゃ行こうか、英雄様!”
「オレが英雄?やめてくれよ。……まだ何も救えてないんだぜ?」
そういうと英雄は不敵な笑みを浮かべて力強く一歩を踏み出した。
「……これから救いに行くんだからな!」
−後に伝説の英雄譚として語り継がれる物語の第一歩を!
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