【オシゴトNo.7】オカシイノダ

改めて、昨日もらった手紙を見てみる。

封筒には、


『とうふ先生へ』


と、可愛い文字で、ボールペンで書かれている。

学級のサヨコからもらった手紙だ。

今日も、サヨコから


「先生、手紙読んだ?」


と聞かれたが、


「ごめんごめん。今日見るからね」


と濁しておいた。


「今週中だからね!」


と、少しすねていた。


さて、中身は・・・


『先生ノ 味覚ガーオカシイノダ』



先生の味覚がおかしいのだ?



いやいや、きっとこれはなぞなぞだ。

学級担任をしていると、しばしば、子どもの考えたなぞなぞを解く機会がおとずれる。

しかし、ほとんどの場合は、前日TV番組でやっていたものを真似したモノなので、難なく解くことができる。

さて、どうしたものか・・・


職員室のイスに深く座り、コーヒーを一口飲む。


わからない・・・


どうやって読むのだろう。


こういうときに、なぞなぞが解けないと言うと、子どもが自信満々に解説してくる。

それでもいいのだが、悔しいので、じっくり考えたい。


コトン


あ!コーヒーを少しこぼしてしまった。手紙に!



文字が薄くなっている?


コーヒーのこぼれたところの文字が少し薄くなってきている。


『ダ』の点々が・・・消えた。

『タ』になった。


そうか!

これは、熱で消えるボールペンと普通のボールペンを組み合わせて、書いているんだ。


つまり、この紙全体を温めれば・・・


引き出しにあった消しゴムで強くこすると、

新たな文章が浮かび上がった。


ちなみに、次のように変化した。


『先』→そのまま

『生』→そのまま

『ノ』→そのまま

『味』→『口』

『覚』→『ッ』

『ガ』→『カ』

『―』→そのまま

『オ』→『ノ』

『カ』→消えた

『シ』→そのまま

『イ』→消えた

『ノ』→消えた

『ダ』→『タ』


つまり、

『先生ノ ロッカー ノ シ タ』


『先生のロッカーの下』!


急いで、教室へ行く。

先生ロッカー(教材が入っている)の下を見ると、別の手紙が床との隙間に挟まっていた。


「これは・・・」


中を見て、目を疑った。

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