【オシゴトNo.5】ヌメヌメとドロドロ

5月下旬の放課後。


僕は、下半身をヌメヌメでドロドロの液体まみれにしていた。


このヌメヌメでドロドロの液体の正体はプールの水だ。

茶色と緑色と、黒色を混ぜたような色で、いろいろな虫や、カエルの死骸が漂っている。


来週のプール掃除のために、プールの水を抜いていたのだが、半分ぐらいまで水位が下がったところで、

排水溝にゴミが詰まったらしく、水が抜けなくなってしまっていた。


誰かが、この1年間放置された汚すぎるプールの水に腰まで浸かって、ゴミを掻き出さなければならなくなった。しかも、水には、壁面についた汚れを落とすために、ハイクロン(塩素)を10キロほど投入していて、ヌメヌメなのだ。


この仕事、誰がする?


体育主任の僕でしょ。


「とうふセンセー。どうですかー?」

「どう?排水溝の場所わかる?」


プールサイドでは、緊急事態に備えてハヤシ教頭と、ヒロコ先生が付いてきてくれている。


「なんか、赤いイトミミズみたいなのが泳いでますー」


気持ち悪すぎて、今にでも出たい。

本当はこんな仕事したくない。

でも、僕が出たら、ここにいるのは教頭か、ヒロコ先生しかいない。

教頭はともかく、ヒロコ先生にこんな仕事はさせられない。

つい、ヒロコ先生がヌメヌメでドロドロの中に入るのを想像してしまう。

ダメだ。

僕が、いいとこ見せないと。


「水飲まないようにねー」


ヒロコ先生が声をかけ続けてくれている。

排水溝の場所は分かったが、つまっているゴミを取るには、腕の長さが足りない。

顔を水につけて、しゃがんで取るしかないようだ。


「んー。とれるかなー」


嫌そうな声を出すと、ヒロコ先生が


「代わろうかー?」


優しい。。。でも、

それは、ダメ。ぜったい。


すぅ


大きく息を吸って、



決めた。


ドボンッ


目を閉じて、探り探り・・・


あった。


これだ!えい!


ゴボッ・・・



水の抜ける音が聞こえた。






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