#11 于珊 - 不渡りの危機

 イスラムの自爆テロ犯のニュースを見るたびに思うのは、犯人が爆弾を爆発させた時、爆弾が実際に爆発しないことを少しの期待はあるのだろうかということだ。

 王弁護士は父の圧力で、于航が重複販売で生前契約と納骨堂契約を履行する能力がないことに目を瞑り、張会計士は于航の企業価値評価書を出して、父の上場計画は成功した。もちろん、闇金の高額な利子も支払うことができないが、父は、株価の高騰を利用して、より多くの人々に生前契約を購入してもらい、より多くのキャッシュフローを生かして利子の差額を埋めることを期待していた。

 しかし、于航のキャッシュギャップは大きすぎて埋めることができないのが現実だ。

 初めての不渡りになる前夜、父は急いで家に帰ってパスポートを探し、アメリカ行きの航空券を二枚予約したが、その内の一枚は私の名義ではなかった。彼が家を出る前に、少し罪悪感のある表情で私を見て、「君も早く逃げよう!」と言った。

 しかし、彼は翌日になると手形が不渡りになること及び彼の個人口座に入っている全ての金を持って行ったことを教えてくれなかった。

 記者たちが于航ビルの下に群がったとき、銀行がオフィスの電話を鳴らし続けたとき、民間の債権者が貴重なアンティークや書道や絵画作品を持っていくために駆けつけたとき、私が検察官の召喚状を手に持っていたにもかかわらず、王弁護士の携帯へ電話しても電源が切られたとき、私は逃げるには遅すぎることを知り、署名した連帯保証契約と約束手形に直面しなければならなかった。

「粉飾決算と手形の不渡りになることについて知っていましたか?」

「会社が株式公開前にキャッシュフローの問題を抱えていたことを知っていましたか?」

 検察官が尋ねたすべての質問に対して、一つも答えることはできなかった。 事前に知っていたことは否定できない。川の向きを変えようとしてボートを漕いでいたのに、最後は川の流れに沿って漂流してしまうようだった。漕ぐかどうかにかかわらず、当然同じ方向に流れて行くので、いっそ手放し、どこに行くか見てみよう!

 私は未だに今の裕福な暮らしにはまっていることを認める。上場に関する全てが詐欺であることはわかっているが、検察官が言ったように勇気はない。

「たとえそれを止めることができなくても、告発はできるでしょう!」

 告発して、それからは?検察官は于航の支援がなければ、基金が活動を続けることができないことを知っている?彼は、彼が今話している人物が実は私の父であることを知っている?彼は父に見捨てられた私、実は被害者の一人であることを知っている?

 誰も私に同情してくれない。社会全体の世論は私たちの家族が詐欺師だと思っていた。于航の少数株主たちは私の家の外で待って卵を投げてきた。債権者はヤクザのような人たちと一緒に私の家に押し入った。基金のことでさえ、私の犯罪を隠蔽するツールだと言われていた。于航の従業員は、給与が支払われないことを恐れてストライキをした。弁護士は、リテイナー (前払い) を受け取っておらず、弁護することを拒否した。生前契約と納骨堂のスペースを購入したお客さんは、私の家の前に来て、一日中に払い戻せって抗議した。私は父の携帯に電話をかけたが電源が切られていた。全世界に捨てられ、愛するものがなくなり、私はぼんやりと于航のオフィスビルの最上階まで歩いた。

 見下ろすと、七十五階の高さは人が死ぬのに十分な高さであることで足が震え、生き残るにも自殺するにも勇気が必要なものだとわかった。

 この時、阿星が一枚の便せんを持って私の前に現れた。

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