第三章 四合院古宅(4)

「服を着てください」白清夙は引き出しからリモコンを取り出して、暖房をつけた。「あなたの肺と気管は溺水のせいで損傷しています。だから静養が必要です。あちこち飛んだり跳ねたりしないでください。一日だけ泊させるから、明日の朝になったら家に帰っていい。後で少し出かけるから、お腹が空いたら、自分で出前を頼んでください」

 陸子涼は衰弱な状態でベッドの縁に支えたまま、声がかれた。「え、ちょっと待ってください──」

 白清夙は待たなかった。

 彼は直接居間を通り抜け、外まで行きドアを閉めた。

「……」陸子涼は自分の情熱さがまるで氷山にぶつかったようだ。「なんだよ?コンコン、怒ってるのか?何でだよ……」

 外、白清夙は自分の部屋に戻りコートを着て、部屋を離れ靴を履いたら、携帯電話が鳴った。

 すぐに電話に出ると、中から重厚な声が聞こえた。

『もしもし、俺に用事か?さっきは忙しくしているから、電話に出てなかった。どうした?』

カク警官、専任者を連れて明石潭の東側、つまりスワンボートのところまで行って捜索をお願いします。底に死体がありますので」

『……クソっ、まじか』

 通話が終わった後、白清夙は車の鍵を持って出かけようとしたが、中庭を通り抜ける時に、無意識に客室のドアに視線を送った。

 中は非常に静かだった。

 白清夙は視線を戻した。

 今日は残業しないといけない。

 さほど行かないうちに、何故か陸子涼の青白い顔と胸を抑えて軽く咳をし、衰弱で苦しそうな姿が頭によぎった。

「……」

 白清夙は急に振り返って厨房まで歩いて行き、米を洗ってお粥を作った。

 彼は自分の領地に死にかけている命がいることを嫌っていた。

 何せ、一番誘惑的な獲物はいつだって、成熟で豊かな姿だった。


 ◇


「通報者である君がこんなにも遅いとは。君の家はこの辺りにあるじゃないか?もう来ないかと思ったよ」

 白清夙が立入禁止テープをくぐり抜けた瞬間、郭警官の大声が聞こえた。

「出かける時に、ちょっとしたことに躓きました」白清夙は郭警官に向けて歩き、もう何艘かのボートが明石潭の水面上にあり、只今捜索と引き上げる作業を行っていた。「死体は見つかりましたか?」

「まだだ。そんなに早いわけないだろう!多分早くても、丸々一日くらい掛かッ──」と郭警官は言った。

「見つけました!」

 二人は直ぐにそっちへ視線を送った。

 岸辺から約三百メール離れたボートの上にいる探索隊員は彼らに向けて手を振った。

 郭警官のトランシーバーから相手の声がした。「先輩、見つけました。水の底にいて、何やら重い物に縛られています!」

 郭警官はトランシーバーの送信ボタンを押しながら、「気を付けながら早く引き上げろう。全員手伝いに行け。安全に気を付けて」と話した。彼は差し迫っているように湖面を眺め、電話を取り出し何本か電話を掛けてから、振り返って白清夙に言った。「君が現場にいるなら、検死を頼んでいいか?箱なら誰かに持ってくるように頼んでおく」

「わかった」

「検察官なら後で来る。今日はちょうどリャン検察官が当番をしている」郭警官は電話を切って、疲れたような顔をしていた。彼はゆっくりと眉間を揉んで、小声でつぶやいた。「死体に重い物を縛って水の底に捨てる……またあいつか?もし今回の被害者の顔もぐちゃぐちゃになっていたら、間違いなくあの変態の仕業だ」

 白清夙は平然とした口調で「後で見れば分かります」と言った。

「ちぇっ、一か月間に三件もの事件を起こした。もし同一人物なら、あいつは紛れもなく殺人鬼だ!あいつをつかまないと、何人が死ぬのか分からない」郭警官は深く息をついた。白清夙が何事もないような顔をしているのを見て、またこう言った。「そう言えばおかしなことに、さっきまで長い時間を掛けて捜索を続けたが、死者を見つけられなかった。何で君が来た途端、急に見つけた?こんなことは以前にも起きたことがあるんだな?」

 白清夙は無表情なままだった。「私はいつも死体を見つけた後に来ます」

「いやいや、絶対に起きたことがあったわ。一瞬思い出せないだけだ。後で梁検察官が来たら聞いてみるよ。あいつの記憶力はめちゃくちゃいいから、絶対に覚えている。あ、そう言えばまだ聞いてなかったな。何で水の底に死体があることを知っているんだ?」

「見ましたから」

「だからどうやって見たって聞いてんのよ。死体は水の底に沈んでいるだぞ!」

 白清夙の視線は何時しか岸辺に向けられた。

 鮮やかな緑色の芝生の上に、元の顔立ちが分からない怖い人影がゆっくりと水の中から這い上がって来た。

 あの者の全身はびしょびしょで、真っ白で腫れ上がった体を必死に動かして、怪物のように岸辺に上がった。

 しかしこの場にいる警察も立入禁止テープの外にいる野次馬も、誰一人その怖い者に気づけなかった。

 あれはさっき、水の中に陸子涼のふくらはぎをつかまっている水鬼だった。

 水鬼はどうやら自分が見える人を感じられるようだった。ざっと頭を上げ、直接に血だらけになった歪んだ顔を白清夙に向け、口を開けては閉め、何やら叫び声を出していたようだ。

 だけど白清夙にはその声が聞こえなかった。

 彼はただ平然として水鬼に視線を送り、それから死体を引き上げた者たちが乗るボートに目を向けた。

「何で答えてくれない?」と郭警官は問いかけた。その何でも根掘り葉掘りに聞く性格は壁にぶつけた途端にどんどんかき立てられた。「おい、何か隠しているのか?まさか死体を捨てる過程を見たのか?君はまさか──」

「さっき人が溺れて、その人を助けた時に見ました」白清夙は簡潔に答えた。

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