第三章 四合院古宅(5)
「何だって?こんなにも寒い日に溺水だって?!助かったのか?大丈夫なのか?」と郭警官は驚きながら尋ねた。
「はい、大丈夫です。今うちにいます」
「……はぁ?!」郭警官は呆気にとられながらさらに尋ねようとしたが、白清夙はもうその場を離れた。
「何なんだよ。彼の家に入れるのは一体どんな人だ?」郭警官は早足で後についていき、「めちゃくちゃ気になる」とぶつぶつとこぼした。
一苦労して死体を引き上げた後、ボートは凄いスピードで岸辺まで戻った。捜索隊員は慎重に死体袋をボートから降ろし、芝生に平らに置いた。
「死体の足に縛っている重い物は後ろのボートの上にあります」捜索隊員は言った。「検査したところ、一袋の赤レンガです。死体の腐敗が非常に酷く、左足を無くしており、まだ見つかっていません。死体の左足にも一袋のレンガに縛られていると疑っています。引き裂かれた後に他の所まで流れていった模様です」
郭警官は頷いた。「お疲れ、必ず無くなった左足を見つけるように」
「もちろんです」
そんな時、また何人かが立入禁止テープをくぐり抜けた。一番前にいるのは一人の優しくてエレガントな男性だった。
「梁検察官」と郭警官は軽く挨拶し、簡潔かつ速やかに今の状況を報告した。
白清夙は手袋をはめた。
撮影を終えた警察官はそっと傍に移動し、白清夙は身をかがめて検死を始めた。
死者は一人の男性だった。捜索隊員が言ったように、死体の腐敗はかなり酷いかつ水に入り浸っているせいで、死体は恐ろしいほどに腫れ上がって、吐き気を催すほどに強烈な死臭が漂っていた。
全員は密かに息を止めていたけど、白清夙だけは相変わらずに呼吸をして、淡々と口を開いた。
「最低でも四週間以上は死んでいますね。死者の顔面からは元の姿を判別できず、初歩的な判断は鈍器による損傷です。手足には明らかな外傷がなく、被害にあった当時で既に意識を失い、薬による失神または泥酔の確率は極めて高いです」白清夙はその細長い指で死者の顔を支えた。「顔の重傷が致命傷になることもあるが、死体が酷く腐敗しているせいで、直接に死因を判断できません。致命傷が顔の創傷である可能性や、薬物の可能性もあり、または……」
彼は視線を上げ、梁舒任と郭警官を見た。「誰かに失神させてから、溺死させました。それから顔面が破壊された後に重い物に縛られ、明石潭に投げ捨てられました」
梁検察官と郭警官の顔色は瞬時にひどくなった。
「あいつで間違いないのか?」梁舒任が尋ねた。
「この死者は左足を無くしたけど、私からすればやり口は基本的に一致しています」白清夙は言った。
「前回と最初の時は明石潭の西尖辺りに死体を捨てたな。何で今回は東尖に捨てた?この犯人は狡猾すぎて、神様まで彼の手助けをしているようだ。毎回ようやく彼が通り過ぎた所まで追跡したというのに、監視カメラの録画映像を見てみると、肝心な所で何故かぼやけてしまう!未だに使えそうな手がかりが見つかっていない」郭警官は言った。
「死亡時間を順に並ぶと、この死者こそが一番目の被害者です。もし彼は犯人が最初に目を付けた獲物なら、彼の身には何か犯人にとって特殊なところがあるはずです」白清夙は検察官を眺めながら、「解剖をお勧めします」と言った。
それと同時に、四合院の客室で。
陸子涼は昏睡状態になった。
彼は安らかに眠れなかった。
全身が寒くなったり、熱くなったりして、胸元から喉まで一頻り痛み出した。陸子涼は目をしっかりと閉じて眉をひそめ、青白い顔には一粒一粒の冷や汗が出た。彼の呼吸が少し荒くなり、時折咳をして、衰弱で苦しそうな呻き声を出していた。
彼の記憶の最深部に隠し、瀕死状態になる時にだけ浮かぶ思い出が頭に再びよぎった。
──溺死した奴はあなたに残す。生きている奴を連れていく……
──嫌だぁ……
陸子涼は苦しそうに頭を傾げ、「嫌だ……」とそっと寝言をこぼした。
──もう永遠に会わないかもしれないよ。
──外に出てお別れしないのか……
陸子涼の胸元は慌ただしく上下し、かっこいい容姿には珍しく微かな脆弱が露になった。彼の喉から微かな呻き声が出て、小動物のように「嫌だ……」と泣きわめていた。
──死なないで。あなたは絶対に死んじゃダメだ。
──小涼……
陸子涼は息を呑んでから、グッと目を開けて起き上がった!
彼は急いで息を整えた。目の焦点が合わず、まだ我に返っていない内に、一滴の冷たい何かが手の甲に落ちた気がした。
その冷たさについ手を握り締めた。
丸一日に昏睡して、今はもう夕方になった。マゼンタ色の夕焼けが窓から部屋へ差し込んで、彼はベッドの上で暫くポカンとしてから、ゆっくりと手を伸ばし、顔に付いているものを拭った。
「……お腹が空いた」
彼はそっと独り言をこぼした。
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