校内一の美少女に弱みを握られ、何故か好きな人が病み始めた。
空翔 / akito
第1話 彼女が欲しい
ある日の昼休み。
いつも通り教室はクラスメイトたちの談笑でわいわい盛り上がっていた。
そんな中、僕だけはいつも以上に心臓が高鳴っている。
後方から誰かが話しかけてきているが、そんなのに構っていられる余裕はない。
そして次の瞬間。
それは現れた。
「ねえ! 一緒にお昼食べよ?」
開いていた窓から流れ込む冷たい風が、声の主の金色の髪を靡かせる。
クラスメイトたち……いや、廊下からも多くの生徒が僕たちのことを見ていた。
☆☆
あぁ……彼女が欲しい。
僕、和泉
「……どうしたんだよ。そんなあっけらかんとして」
机横に椅子を移動し、焼きそばパンを食べている彼、天沢
天沢君はザ・平凡な僕とは違い、正真正銘イケメンである。赤茶色の髪は天沢君のトレンドマークだろう。
勉強もそこそこ出来て、おまけにサッカー部の二番手エースという名を持っている彼を女子たちが放っておくわけもなく、もちろん僕と違って彼女がいる。
「一体いつ、僕にはアオハルが訪れるのかなと思ってさ……」
「なんだよ。またそれかよ……そんなもん、早くあいつに告れば万事おっけーだろ」
そう言いながら天沢君が向ける視線の先には、一人の女子の姿があった。
既に昼食を食べ終わったのか、彼女は無表情でスマホを凝視している。
銀色の長髪は後ろで大きく一つに結ばれており、横からでもわかる整った顔立ちに立派なスタイルをお持ちの彼女の名は、桃瀬
「生憎と僕にはそんな勇気がないんだよなぁ……」
僕は落胆気味に己の圧倒的自信の欠如を嘆く。
「別に振られたっていいだろ。そうしたら諦めがつくし、また違う人探せばいいじゃん」
「普通の男子ならそう出来るかもだけど……ていうか、天沢君にそう言われるとなんか立ってくるんだけど……腹が」
「はははっ! まあ俺は今まで告白したことはないからなぁ。基本全部相手からだったし」
天沢君は笑いながら自分語りをしてきた。
これが持って生まれた人とそうでない人の差なのだろうか。
「多分僕は告白されるなんて一生ないだろうから、いつか勇気を振り絞るしかないんだけどね」
「まあ頑張りたまえ我が親友よ」
そんな僕たちにとっては日常茶飯事といえる会話をしていると、何やら廊下が騒がしい。
気になりそちらへ視線を移す。
この学校の教室と廊下を隔てる壁には窓がついているため、中外両方から互いの状況を把握しやすい。
「お、水瀬じゃん……てか、まじか!」
驚きながら天沢君が水瀬と呼ぶその男子は、サッカー部のエースを背負う同級生だ。
天沢君同様整った顔立ちをしていて成績も優秀。
水瀬君も天沢君も、まだ一年生なのに部活でトップの実力とか、神はなんでこんなハイスペック人間を作ったのだろうか。
いや今そんなことはどうでもいい。教室前の廊下では、今まさに凄いことが起きているのだから。
「ついにあの女王様に告白する気か!?」
盛り上がっている天沢君。
廊下で水瀬君が対面しているのは一人の女子。
艶やかで艶のある金色の髪は腰付近まで伸び、スタイルも引き締まるところはしっかり引き締まっており、出るところはしっかりと出ている。
天童沙月、この辺り一帯の土地を牛耳る有名な天童家の一人娘で、今までも数多くの男子に告白されてきたが、誰一人として彼女と恋人に至った男はいなかった。
そしてその見た目だけでなく、帰宅部である彼女はスポーツにおいても運動部顔負けの才能を発揮し、成績も常に学年トップ。
そんな天童さんについた異名は『絶対女王』だった。
「水瀬君か。彼が駄目だったらこの先天童さんと付き合える人なんているのかな?」
「確かに、水瀬は俺たちの学年の中でも一番モテてるっていっても過言ではないからな」
二人で廊下での成り行きを見守っていると、どうやらここで告白は起きなかった。
おそらく放課後どこかに来てほしいとでも言ったのだろう。
それにしても、大勢の前で告白予告とか……よく出来るよなぁ。
僕には一生真似できない芸当だろう。
「俺、ちょっと行ってくるわ」
そう言うと天沢君は椅子から立ち上がり、廊下へと駆けていった。
多くの生徒たちが盛り上がっている中、ただ一人微動だにせず先ほど同様スマホを見つめている桃瀬さんの姿が僕の目に留まった。
☆☆
時は放課後。
他に誰一人いない教室にて、僕は一人今日配られた宿題を解いていた。
家に帰ってからだと集中力が解けてしまい手をつけられないことがほとんどだ。
だからこうして、たまには学校に残って宿題を済ませることが多い。
「あぁ、やっと終わったぁ……」
シャーペンを机に置き、上半身を伸ばす。
約一時間ほどで、今日の分の宿題は討伐した。
季節が三月ということもあり、空は夕焼けのオレンジ色で満ちている。
外からは運動部のかけ声が聞こえてくる。
帰ろうか。
もう教室に残る理由はないだろうと思い、鞄を手に取って僕は教室を後にした。
そのまま玄関へと向かい、靴を履き替えて歩き始める。
よくあんなに頑張れるよな。
校門までの道のり、運動部たちを傍目に歩く。
僕自身決して運動が不得意というわけではない。
ただあそこまでやれるかと言われると戦意喪失という理由で部活には所属しなかった。
そして歩いていると、校門にて一人の生徒が立ちながら誰かを待っていた。
……天童さん?
後ろからでも分かる異彩を放つ容姿。
間違いなくあの天童さんだった。
彼女はひょいとこちらへと振り返り、僕と目が合ったかと思うとこちらへと歩み寄り始めた。
何かの間違いだろうと思い、あたりを見渡すが、ここには僕と天童さんしかいない。
そして僕の前へと来て立ち止まると、彼女は言った。
「ねえ和泉君。これから家に行っていい?」
☆☆
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