Day 21

9月28日 火曜日


辰光は初めて店でラテを注文した。

彼はミルクが苦手だ。

いつもはミルクなしのブラックコーヒーしか飲まなかった。


「どうしたんですか?」

私はわざとらしく彼をからかう。

辰光が、最近ちょっと変わりたい、と言った。


「君はラテが好きじゃないんか?なら……」

躊躇する辰光が可愛く見えた。

「君が好きな味がわからないと、前に進めないんだ」


そう言って彼が取り出したのは、ある舞台のチケット二枚だった。

それは、映画『恋人たちの食卓』を原作とした舞台だった。

土曜日の仕事帰りに一緒に観劇してほしいと言われ、

チケットを渡すときに危うくテーブルの上のラテがひっくり返りそうになった。


寝る前にラテを作った。

実は、私はミルクの味が好きで、ブラックコーヒーはそんなに好きじゃない。

でも、あれがなくなると、その好きはそんなに特別じゃなくなってしまう。

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