あの人に殺される前の100日間／小島

Day 19-20

9月27日 月曜日

鉢植えからついに球根が浅植えになっていて芽が出た。

そして、私の心にもある感情が芽生えた。

Beatは私が使っている出会い系アプリだ。

他のアプリの使い勝手がかよくわからないが、

このアプリは私に合っているようだ。

Beatのプロフィールには、

自分の趣味について入力できる「オルゴール」というインターフェースがあり、

趣味、好きな作品、気分、

データベースの中にある単語などを入力するだけで

システムが自動的にメロディーを生成してくれる。

メロディーは毎日変更することができる。

そのマッチング機能のインターフェースは一面の海のような画面で、

海面には無数のオルゴールが浮かんでいる。

各ユーザーは一日に五回、オルゴールを開けるチャンスがある。

オルゴールを開ける前に、五秒だけそのメロディーを試聴でき、

箱を開けると、三十秒メロディーを聴くことができる。

オルゴールは、表紙として画像を表示できる。

好きなオルゴールを選択して、

お気に入りに追加することもできる。

そのオルゴールの持ち主があなたのメロディーを持っている場合、

お互いに「楽（ガク）友（トモ）」になることができる。

楽友になると、お互いにメッセージを送ることができ、

さらに、アプリのアドバンス機能が開放される。

メロディーの制作には、かなり苦労した。

私の一番好きな映画『ベルヴィル・ランデブー』のポスターを

オルゴールの表紙に設定した。

わずか二日間で

私のメロディーをお気に入りに追加した人が六人もいた。

この「楽友」たちからのメッセージに返信する準備はOKだ。

向かいのSさんは、今夜もまた違う男を家に連れてきた。

私には彼女のように咲く勇気がない。

でも、まずは探してみよう。

花の名前を。