4 更新します!

「やあ、小卉」五日目になって、李亞駿はまたスタバのコーヒーを持ってきた。彼は華麗な動きを見せて蘇小卉の前に現れた。「今日はフラペチーノだよ。新しい味なんで飲んでみてください」

「わっ!気を使っていただかなくて大丈夫です。お金を使わせちゃってすみません」蘇小卉は慌てながら言った。

「美しいレディーにおごる飲み物が無駄遣いになる訳ないでしょう?」李亞駿は笑みを浮かべながら自分の席に戻った。

 何ともチャラチャラした奴だ。黄佑恩は隣で聞いていて気持ちが悪くなりそうだった。こっそり蘇小卉の様子を窺ってみると、どうしてだろうか、その表情には喜びの色が感じられた。

 黄佑恩はある種の不快感を覚えた。

「あの……彼氏はいる?」昼食中の話題は会社のゴシップだった。黄佑恩はタイミングを見計らって偶然を装ってそう尋ねた。

「いませんよ。もう三、四年もフリーですし」と蘇小卉は笑いながら答えた。

「マジで?スペック高いのに」

「お褒め頂きありがとうございます。でも必ずしもそうでもないんですよ」

「好きなタイプは?」黄佑恩は平気を装って、おどけた口調で「もしかして、ああいうチョイ悪というか、チャラチャラした奴が好み?」と尋ねた。

 蘇小卉は顔を横に振った。「表面的な言葉や行動は私にとっては二の次です。普段からお互いのことをよく知り、相手の本心や考えを知ってから交際を考えるようにしています」

 聞いてみたらなるほどと思ったが、どちらにも解釈できる答えだった──その疑念を黄佑恩は頭から消すことができなかった。故に、愛想笑いをするしかなかった。


 時間の流れは早いものであり、あっという間に蘇小卉のレンタルの最終日になった。夜に黄佑恩が帰宅すると、沈曼依からほぼ時間ぴったりに電話が来た。「こんばんは!黄さん、この一週間は満足できました?」

「はい、とても満足しています。蘇小卉は能力が高いですし、仕事もとても効率的でした」と黄佑恩は答えた。

「それはよかったです!そう言っていただけると私たちも嬉しいです。レンタルを更新しますか?嬉しいお知らせがあるんです。今週また新しいプランをご用意しました。一週間の更新で25,200元のお得料金ですが、一気に三週間延長するとたったの69,900元です。一日当たり3,300元です!どうでしょう?ご検討いただけますか?」

 なんということだ。黄佑恩はインターネットバンキングで口座残高をチェックして大いに悩んだ。

 だが、十秒も経たないうちに黄佑恩は心を決めて、ウェブページを閉じた。

「もう三週間レンタルします!」と自分のスマホに対して話しかけた。


「皆さん、Skypeの開封確認をオンにしてください」謝旻娜は職場のグループでそのように指示した。「皆さんにメッセージが届いているかいつでも確認できるようにしてください」

 黄佑恩は目を丸くしながらこのメッセージを見た。黄佑恩と蘇小卉はお互いの目を見合わせると、信じられないような怒りが込み上げてきた。

『他人に未読か既読を知られることが個人の自由だよね?何を根拠に俺の人権を侵害するんだ?』義憤にかられた黄佑恩は蘇小卉にメッセージを送った。

『そうですよ。もちろんメッセージを受信したら返信しますし、あえて返信しない人なんているんですか? みんなが読んだかどうかわからないのに、何の意味があるのでしょう?』 蘇小卉は白目をむいた顔の絵文字を入れて返信した。

 このところ、黄佑恩の内心は穏やかではなかった。それは、まず謝旻娜の行動が前よりもひどくなったことだ。湯社長は、彼女にいつも社員の仕事が期待に応えているかとか、彼女が上司である責任を果たしているかとか、毎日問いかけていた。そこで謝旻娜は新しい規則として部の全員に毎日業務日報を作成するように指示したのだ。

 表面上、宣伝部の同僚たちはあえて何も言わなかったが、はらわたが煮えくり返っていた。「湯社長がみんなの毎日仕事の進捗状況を報告させたい」というのは謝旻娜の口実に過ぎず、実は彼女自身がみんなをコントロールしようとしていることを、皆もわかっていた。

『仕事が終わらないのに誰が日報を書く暇があるのかよ?』

『時間の無駄の意味のない報告は、その人の趣味を満たすためだけなんだよ。』

 皆こっそりチャットで話し合った。

 黄佑恩は、デザインや動画のバージョンを増やさなければならない上に、謝旻娜とはずっとやり取りしなければならなかった。「文字が小さい。あと線に揃えたほうが美しいわ」、「ロゴを少しずらして」、「この色がダメ。カラーレベルを上げなさい」、「このデザインは酷いわ。なんでこんなに不細工なわけ?」など具合に矢継ぎ早に飛んでくる。中でも最悪なのは彼女が「酷い」と言った写真は、実は黄佑恩が朝から血を吐く思いで光と影を調整した努力の結晶だったのだ。

 黄佑恩の仕事量はますます増えてきた。特に、彼には専属アシスタントがいることを知った謝旻娜は、何でもかんでも彼に丸投げして、割り当てられた仕事は四、五人の分量以上に達していた。

 黄佑恩は仕事の半分近くを蘇小卉に振り分け、二人で話をする暇もないほど忙しく仕事をした。

 蘇小卉については、黄佑恩も不満たらたらだ。

 蘇小卉と李亞駿はどんどん距離が近くなり、『上司』である黄佑恩を差し置いて、時々ランチで一緒になることさえあるのだ。李亞駿は自ら積極的に蘇小卉の席まで来て、いろいろ細かく教えてくれるようになったので、蘇小卉は困ったことがあると、まず李亞駿のところに聞きに行くようになった。

 李亞駿は一体何なんだ?黄佑恩はムカムカしながらそう思った。謝旻娜が部下に振る仕事量が異常に多いが、李亞駿は話術とプレゼントを駆使して上司を喜ばせるのが得意なこともあり、いつも一番簡単な仕事を任される。故に、部内で唯一、女の子を口説く暇があるのだ。

「Rodney、今日中にセットトップボックスの英語版動画を提出しなさい。社長は明日午前に出張だから、車内で見るわ」これも謝旻娜の『賢明な判断』というわけだ。黄佑恩はしぶしぶ引き受けようとしたが、思い直してすぐに蘇小卉に指示した。

「今日は四時前に動画を完成して。どこかを直すべきか、俺が見るから」と黄佑恩は確認を求めた。

 当日の三時から謝旻娜が一分おきに黄佑恩へ「Rodney、動画はまだなの?」と聞いてきた。

「小卉、動画はまだか?」黄佑恩は次に蘇小卉へ確認した。このやり取りは少なくとも十回以上続いた。

「Rodney、どの画面の字幕も全部作るから、そんなに早く終らせませんよ」と蘇小卉が答えた。

「終業までまだ二時間半ある。急ごう」黄佑恩は淡々と答えた。謝旻娜のしつこいメッセージを見てうんざりして顔をしかめ、彼女を黙らせてやることしか考えられなかった。

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