第参話 生命の選択『シャチ』
〈いらっしゃいませ。今作品『神の理想郷』をダウンロードしていただき、誠にありがとうございます。私のことは『案内人』もしくは『AI』とお呼びください〉
目を開くと、真っ暗な背景に文字が表示されている。
文字が緑色に光っていて、目に優しい。
〈『神の理想郷』についてご説明させていただきます。スキップしたい方は『スキップ』とおっしゃってください。…………それでは説明をいたします〉
公開されている情報はそれなりに取得してはいるけど、不安だからスキップはしない。
まず、もう1つの人生を生きるように、子供からスタートすること。
そして、選ぶ種族によって、それぞれ環境や文化の違う国で育つこと。
〈この世界は主に5つの種族が存在します。エルフ・クジラ・鳥・コウモリ・ヒト。『エルフ』は魔法を扱うことができ、妖精や森と親和性があり、爽やかな空気を宿しています。『クジラ』は楽器を扱うことができ、水や海と親和性があり、穏やかな空気を宿しています。『鳥』は暗器を扱うことができ、精霊や空と親和性があり、静かな空気を宿しています。『コウモリ』は血を扱うことができ、死者や地下と親和性があり、冷たい空気を宿しています。『ヒト』は動物です。5種族はそれぞれ違う土地で暮らしており、エルフは『地上世界』に。クジラは『海上都市』に。鳥は『空中都市』に。コウモリは『地下世界』に。ヒトは地上の広範囲に。さて、どの種族を選びますか?〉
「…………」
どの種族も好戦的なのかなぁ?
「あの~、少し質問をしたいんですけど……」
〈はい。構わないですよ〉
あ、声に対応してる文字なんだ。
「どの種族が1番平穏に暮らしてて、平和ですか?」
〈……返答に時間を要します。お待ちいただく間、好きなメニューをお選びください〉
その文字を読んだ途端、真っ暗だった背景が明るくなり、目の前にメニュー表が現れた。
〔メニュー
・赤のおすすめ トマトジュース
・黄のおすすめ レモンティー
・青のおすすめ ウォーター
・緑のおすすめ 緑茶
・茶のおすすめ 烏龍茶
・白のおすすめ 飲むヨーグルト
・黒のおすすめ ココア 〕
あ、全部飲み物なんだ……。
どれにしようかな。
「あの、『白のおすすめ 飲むヨーグルト』で、お願いします」
カランカラン。
何もない空間から、少し先にある机に頼んだものが置かれた。
え、幽霊?
そう思ってしばらく待っていたんだけど、何も起きなかったから食べちゃおう。
〈もう少々お待ちください……〉
周りをよく観察する。
『……』の文字の後ろに、小さく光る緑色の球と、白色の球がふよふよ浮いていることに気づいた。
〔追加メニュー
・赤のおすすめ いちご
・黄のおすすめ バナナ
・青のおすすめ ぶどう
・緑のおすすめ マスカット
・茶のおすすめ キウイ
・白のおすすめ ナシ
・黒のおすすめ チョコ 〕
気づいたら新しいメニューが追加されていた。
今度はデザートだけ。
「あ、あの、『青のおすすめ ぶどう』を1つ……」
コトン。
空けていたスペースにお皿が置かれた。
「……うぇ?」
モゴモゴと食べながら、周りを見ていたら変化に気づいた。
先程まで緑色と白色の球だけだったのが、青色の球も増えている。
もしかして、メニューに関係しているのかも。
もう少し頼もうかなと思ってたら、終わったみたい。
〈お待たせいたしました。精査しましたところ、解放条件が整いましたのでご紹介いたします。……先程ご紹介しました、4種族の上位種族が開放されました。エルフの上位種族である『ハイエルフ』。クジラの上位種族である『シャチ』。鳥の上位種族である『龍』。コウモリの上位種族である『吸血鬼』です。ハイエルフは『魔術の向上』を、シャチは『芸術の向上』を、龍は『武術の向上』を、吸血鬼は『占術の向上』を担っています。さて、どの種族を選びますか? ……ちなみに最も平和を謳歌できるのはシャチ族だとおすすめします〉
「あ、えっと……シャチ族で、お願いします」
〈かしこまりました。では、転生を始めます。質問はありますか?〉
「……あの、ずっとこの世界に居てもいいですか……?」
〈――はい。貴方様が望むなら……いってらっしゃいませ〉
〈…………必要な魂は、あと3人〉
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