第壱話 生命の選択『龍』
〈いらっしゃいませ。今作品『神の理想郷』をダウンロードしていただき、誠にありがとうございます。私のことは『案内人』もしくは『AI』とお呼びください〉
目を開くと、真っ暗な背景に文字が表示されている。
文字が白緑色に光っていて、目に優しい。
〈『神の理想郷』についてご説明させていただきます。スキップしたい方は『スキップ』とおっしゃってください。…………それでは説明をいたします〉
さすがに初見でスキップはしない。
事前に公表されている情報も、今日公開された情報もあまり見れなかったから。
〈この世界は主に5つの種族が存在します。エルフ・クジラ・鳥・コウモリ・ヒト。『エルフ』は魔法を扱うことができ、妖精や森と親和性があり、爽やかな空気を宿しています。『クジラ』は楽器を扱うことができ、水や海と親和性があり、穏やかな空気を宿しています。『鳥』は暗器を扱うことができ、精霊や空と親和性があり、静かな空気を宿しています。『コウモリ』は血を扱うことができ、死者や地下と親和性があり、冷たい空気を宿しています。『ヒト』は動物です。5種族はそれぞれ違う土地で暮らしており、エルフは『地上世界』に。クジラは『海上都市』に。鳥は『空中都市』に。コウモリは『地下世界』に。ヒトは地上の広範囲に。さて、どの種族を選びますか?〉
「……うーん」
別にどの種族でも構わないっちゃ構わないんだけど。
「少し質問、いいですか?」
〈はい。構わないですよ〉
どうやら音声認識にも対応しているようだ。
「どの種族が1番縛られなくて、自由を謳歌できますか?」
〈……返答に時間を要します。お待ちいただく間、好きなメニューをお選びください〉
その文字を読んだ途端、真っ暗だった背景が明るくなり、目の前にメニュー表が現れた。
〔メニュー
・赤のおすすめ トマトジュース
・黄のおすすめ レモンティー
・青のおすすめ ウォーター
・緑のおすすめ 緑茶
・茶のおすすめ 烏龍茶
・白のおすすめ 飲むヨーグルト
・黒のおすすめ ココア 〕
全部飲み物という斬新なメニューだった。
どれにしようかな。
「『青のおすすめ ウォーター』を1つお願いします」
カランカラン。
何もない空間から、少し先にある机に頼んだものが置かれた。
誰が置いてくれたかはわからないが、ありがたくいただくとしよう。
〈もう少々お待ちください……〉
周りをよく観察する。
『……』の文字の後ろに、小さく光る白緑色の球と、青色の球がふよふよ浮いていることに気づいた。
〔追加メニュー
・赤のおすすめ いちご
・黄のおすすめ バナナ
・青のおすすめ ぶどう
・緑のおすすめ マスカット
・茶のおすすめ キウイ
・白のおすすめ ナシ
・黒のおすすめ チョコ 〕
気づいたら新しいメニューが追加されていた。
デザートだけのようだ。
「『白のおすすめ ナシ』を1つください」
この色の違いは何かあるのだろうか。
とりあえず好きなものを頼んでいるけれど。
コトン。
空けていたスペースにお皿が置かれた。
「あれ……?」
シャクシャクと食べながら、周りを見ていたら変化に気づいた。
先程まで緑色と青色の球だけだったのが、白色の球も増えている。
もしかして、メニューに関係しているのかも。
ただもうお腹いっぱいだから、頼めない。
〈お待たせいたしました。精査しましたところ、解放条件が整いましたのでご紹介いたします。……先程ご紹介しました、4種族の上位種族が開放されました。エルフの上位種族である『ハイエルフ』。クジラの上位種族である『シャチ』。鳥の上位種族である『龍』。コウモリの上位種族である『吸血鬼』です。ハイエルフは『魔術の向上』を、シャチは『芸術の向上』を、龍は『武術の向上』を、吸血鬼は『占術の向上』を担っています。さて、どの種族を選びますか? ……ちなみに最も自由を謳歌できるのは龍族だとおすすめします〉
「なら、龍族で」
親切な案内人らしい。
質問した内容をきちんと返してくれた。
〈かしこまりました。では、転生を始めます。質問はありますか?〉
「……貴女のことを『あいちゃん』と呼んでもいいですか?」
〈――はい。貴女様が望むなら。……いってらっしゃいませ〉
〈…………必要な魂は、あと4人〉
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます