神の理想郷

霜月餅菜

神の理想郷

第零話 すべての始まり

 地球の神は悩んでいた。

 年々増加する人間の数に。

 違う星を管理する女神は悩んでいた。

 停滞する生命の数に。

 二柱は手を取り合い、1つの実験をする。





「ついに本日から発売! 人々が待ち望んだ、異世界のようなゲームの世界へ! さぁ行こう!」


 そんなセリフと共に、ダウンロードできる日を心待ちにしていたゲームが解禁された。

 SNSでも話題になっている。


 〔うぉおおおおおおおお!!!〕

 〔ついにきたか……〕

 〔我の世界がついぞ開く!〕

 〔もふもふパラダイスなのだ!〕


 『#神の理想郷』と調べるとこんな感じで沸いているのだ。

 開示情報はほとんど無く、そんなところも異世界に行くみたいで面白いと好評だった。

 社会には現実逃避をしたい人間で溢れているようだ。

 そう言う私も……。



 日本の大企業がゲーム機を提供し、別の日本の大企業がゲームを開発し、日本限定販売という名目で、共同で実験していると思われる今作。

 けれど、私が惹かれた最大の魅力は、永遠とゲームの世界に籠もれること。

 不思議な技術で、電源供給も人体に必要な水分などの補給もいらない。

 極論、死ぬまでゲームの世界を満喫できるわけだ。

 まぁそんな細かいことなんてどうでもいいか。



 棺桶のような蓋が閉まる、人が入れるサイズの箱が今作のゲーム機で、それに付属していた『謎水』と呼ばれる濡れない水を全部入れる。

 そして裸になり、横たわって蓋を閉めればゲームの起動は完了。

 目を閉じて5秒待つ。


〈人体を確認。魂を認証します……承認。――魂の送付を開始します〉





 ここは何色にも染まらない空間。

 ここは二柱だけが存在できる禁忌の場所。


「どう? いい感じ?」


「えぇ。順調に集まっています」


「魂、汚い人間ばっかりだけど」


「ふふ。利用価値はあります」


「ふ~ん。……あ、そうだ。僕も君の世界にお邪魔したいんだけど」


「でしたら、化けてきてくださいね」


「うん。バレないようにするよ」


「……目的は?」


「単純に、僕の世界の人間がどんなストーリーを歩むのか気になるっていうのと、神のいる世界っていうのはどんな空気なんだろうってね」


「貴方は……いえ、わかりました」


「んじゃ、また1ヶ月にね〜」

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