愛犬と深夜に散歩をする話。

かなたろー

愛犬との深夜の散歩。

 我が家には子供がいない。多分、子供はもうできない。

 だが、我が家には愛娘まなむすめがいる。


 明日ちょうど10歳の誕生日を迎える愛娘まなむすめがいる。


 名前を「ハッサク」と言う。


 男らしい名前だ。


 愛娘まなむすめなのだが、つまりはメスなのだが、名前を「ハッサク」と言う。


 男らしい名前だ。


 愛娘まなむすめは犬だ。犬種はフレンチブルドッグだ。

 人間に換算をすれば還暦に近い老犬だ。


 フレンチブルドッグは、そのぺちゃ鼻のため暑さに弱い犬種だ。

 ゆえに真夏の日中散歩はもってのほか。できるだけ外気が涼しくなる時間、深夜近い時間に散歩をする。


 愛娘まなむすめとの深夜散歩はとっても楽しいのだけれども、ひとつだけ注意が必要だ。


 地面に落ちたセミ。そう、セミファイナルだ。


 我が家の愛娘は、困ったことにこのセミファイナルが大好物なのだ。

 今年に入ってにわかに流行をし始めた昆虫食ブームがおとずれるはるか前から、独自の昆虫食を楽しんでいる。


 もう老犬にさしかかる年齢だというのに、セミファイナルを見つけた時だけは、どう猛な野生の血が目覚め、注意深く地面をみつめている私をあざ笑うかの如く、光の速さでセミファイナルを捕獲する。


 ジジジジィ……


 弱弱しくむせび泣くセミファイナルを救ってやりたいところなのだけれども、我が家の愛娘まなむすめは、一度セミファイナルをくわえてしまうと、強靭なあご力で絶対に話してくれなくなる。


 こうなったら、もう、どうしようもない。


 しかたがなく家のまわりをウロウロと歩き、我が家の愛娘まなむすめがセミファイナルをおいしく召し上がるまで散歩をつづける必要がある。


 我が家の愛娘まなむすめは、明日、ちょうど10歳の誕生日を迎える。

 人間に換算をすれば、還暦に近い老犬だ。


 若いころに比べれば、随分と身体が細くなった。タンパク質の摂取を心掛ける必要のあるお年頃になってきた。

 でも、タンパク質の摂取は、セミファイナルではなくシニア用のドックフードで摂取してもらいたいなぁ……。


 

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愛犬と深夜に散歩をする話。 かなたろー @kanataro_

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