ゲ一ムの序盤で「クソ雑魚」扱いされて死ぬ最弱キャラに転生したので、鍛えまくって生き残ろうと思います~やり込めば実は『裏ボス』だと判明する最強キャラにもかかわらず、過剰に努力し過ぎてました~

月ノみんと@世界樹1巻発売中

第1話 その男児、最弱につき――?


「終わったああああああああ!!!! くそ……死んだわコレ……」


 転生して、すぐに思ったのがそれだ。

 マジか……。

 マジなんか……?


 俺は絶望しながら、おそるおそる鏡を見る。

 鏡は告げていた。


『マジです』


 そう、俺はどうやらゲームの異世界に転生してしまったようなのだ。

 俺が途中までプレイしていた、大人気RPGゲーム「ファンタジアドライヴ」の世界に――!

 

 「ファンタジアドライヴ」――PVが公開された瞬間からバズりにバズりまくり、国内の発売前予約数を塗り替え、累計販売数は『世界一売れたRPG』と、ギネスにも登録された化け物だ。

 

 別に、ファンタジアドライヴの世界に転生したことはいい。

 むしろ、大人気ゲームの世界に転生なんて、面白そうじゃねえか。

 そこまでは、まだいい。

 

 ただ問題なのは、俺の髪の毛の色。

 黒髪――。

 金色の目――。

 

 この条件に合う登場人物は、俺が知る限り一人だけ。

 そう、あろうことか、俺は登場人物で最も弱いとされるキャラに転生していた。


「あのクソ雑魚エスタじゃねぇかあああああっ!」


 ファンタジアドライヴWikiの登場人物紹介に『歩くお荷物』とまで書かれた男。

 あまりの酷評に、その下の『ネタバレ』すら見る気にならなかったキャラ。


 最弱のへっぽこ剣士、エスタ=シモーレ。

 俺はなんとそのエスタに転生してしまったらしい。

 エスタはゲームに出てくるあらゆる登場人物の中でも、かなりの雑魚キャラだ。

 名前のあるキャラの中なら、間違いなく一番弱い。

 もはやその辺のモブにも負けるんじゃないかというくらい、雑魚として知られている。


 そんなエスタは、一応は主人公の仲間サイドのキャラなのだが、その弱さゆえに、一度も戦闘には参加しない。

 だから、エスタの詳しいステータスまでは公開されていない。

 だけど、もし仮にエスタのステータスが見られたとしたら、とんでもないヘボ数値が並んでいること間違いなしだろう。

 エスタは主人公のサポート役として、たまに情報を流してくれるいいヤツだ。

 気の弱い青年で、事あるごとに主人公に助言をして導いてくれる。


 だがそんなエスタは、物語の途中で死んでしまう。

 エスタはラスボス側の情報を、主人公に流していた、重要人物だったのだが――。

 それがラスボス側にバレて、殺されてしまうのだ。

 最弱なエスタのことだから、きっと抵抗もできずに死んだのだろう。


 ――と、ここまでが、俺の知る「ファンタジアドライヴ」のストーリーだ。

 この先は、俺はまだ知らない。

 なにせ、プレイ中にいきなり意識を失ってエスタの身体に転生してしまったんだからな。

 俺は、さっきまで自分の部屋で「ファンタジアドライヴ」をプレイしていたはずだった。

 しかし、ゲームの中でエスタが死んだとほぼ同時、俺はそのエスタの身体に転生してしまったらしい。


「この身体……見た目から察するに、エスタの子供の頃か……?」


 おそらくは10歳くらい。

 エスタが死ぬのは大体18くらいか?

 とにかく、俺はエスタの子供時代に転生してしまったらしい。

 

 これはつまり……どういうことなのだろうか。

 ゲームでエスタが死んだ途端、俺がエスタの子供時代に転生?

 ってことはつまり、エスタの死を止めろということなのか?

 そうなのか、神様?


 幸い、まだエスタは10歳だ。

 エスタが死ぬまで、まだまだ時間がある。

 これから俺があがけば、エスタの死亡フラグを回避できるんじゃないか……?

 俺は死ぬのはごめんだ。

 こうなったら、死なないように強くなってやる!


 エスタはあまりに弱かった。

 心も肉体も、本当に弱いキャラだった。

 正直、戦乱と混沌極まる「ファンタジアドライヴ」の世界では、エスタのようなキャラ、死んでも仕方ないというほどだった。

 なら、どうすればいいか?


 俺は、強くなろう。

 将来主人公に情報を流してることをラスボス側に知られても、殺されないくらいに!

 むしろ、俺がラスボスよりも強くなってやろう。

 エスタが強くなれば、誰にも殺されないで済む。

 俺は、そう決意した。


 幸い、エスタの家系は貴族家系だ。

 それも、かなりいいところのお坊ちゃんって感じだ。

 金も持ってるし、地位も名誉もある。

 こんな恵まれた状況で努力すれば、きっと強くなれるだろう。

 きっと俺は、破滅フラグを回避できる!





 ――と、この物語の主人公【神夜宗一】は思っていた。

 しかし、それは盛大な間違いなのであった。


 なんとゲームの続きを最後までプレイするとわかるのだが――。

 実は、エスタは最弱のわき役キャラなどではなく、物語終盤で出てくる裏ボスなのである。

 一度は死んだふうに見せかけて、エスタは後で復活してくるのだ。

 エスタはこれまで自分の実力を隠し、主人公に情報を流していたにすぎなかった。

 実はエスタは、裏ですべての情報を操る黒幕なのだった。


 ラスボス側の都合のいい情報を主人公に流し、裏で糸を引いていたのはすべてエスタだったのだ。

 主人公側と一度離れるため、死を偽装したにすぎない。

 実はエスタはラスボスよりも超強い裏ボスで、ラスボスを倒したあとに満を持して復活。

 主人公たちの前に立ちはだかる、最後の黒幕キャラなのだ。


 だが、そんなことは、「ファンタジアドライヴ」を途中までしかプレイしていない【神夜宗一】には、知る由もなく――。

 彼は、エスタ=最弱だと思い込んだまま、転生生活を送ることになるのであった――。

 

 だが実際のエスタは、やり込めばわかるように、『最強の裏ボスキャラ』なのだ。

 つまり、そんな才能を持つエスタが、勘違いしたまま努力すると、どうなるか――。

 それは、もう恐ろしいことになるだろう。

 


================

★★★あとがき★★★


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