骸を抱いて、喰べて

青木 司

これは遺言である

私が君に向けた遺言です。

精神疾患を患っていることを知っていて、そばに居てくれてありがとう。


沢山愛してくれてありがとう、私は君にそれ以上の愛を返せていたかな。って思うと違うよね。だって君といて幸せなのに君より先に死ぬなんてこれ以上ない酷い仕打ちをしてると私も思っている。

ずっと前から、置いていかれるのが怖かった。祖父母や両親を見送るのも、ずっと君と居れたとして君を見送る覚悟もありませんでした。


だから私は自ら皆を置いて逝く選択を選びました。幸せは急に終わるものだと自分が1番分かっているのに、君に背負わせてしまったことが申し訳ない、それと同時に安心しています。


君は私の事を純粋で綺麗だなんて言ったけれどそんなことないよ。本当は幸せのまま終わりにしてしまえば永遠に私の時は止まるから。

そして、君を傷つければ私のことを忘れないと思ってしまったから。本当の私はとても醜いです。


骨噛みっていう習慣があるのを知ったんだ、最愛の亡くなった人の骨を食べるものらしいんだけど…大事な人の一部が自分に入ってると思うと愛おしいと思うし、いつまでも自分の中に居てくれそうな気がした。もし君が亡くなった時、私は君の骨を喰べたいと思っちゃった。引かれちゃうかな?

けれどそれくらい愛してます。

ありがとう、美月。



薊が亡くなった、自殺だった。僕と一緒に居て幸せと言うのに前から死にたがっていた。以前から薬を過剰摂取するし、時々ぼんやり何か思い耽っている時もあった。だから僕は彼女の本心は分からないことも多かった。この遺言状を見るまでは。


この遺言状も愛していると全面に出しているが同時に私を忘れないでと言いたいんだろう。

それに最後の文章、それは僕に喰べて貰いたいということなんだろうな。

今やっとわかった、けれど君はもう居ない。

もっと早く分かりたかった、僕は何処にもいかないのに。

正直になれない意地っ張りで寂しがり屋な、なんとも薊らしい遺言だと思った。引かないかななんて心配してるけど、僕も君と同じくらい重い感情を持っているんだなって、今更気づいてしまった。


忘れないよ、君の骨を抱いて君の骨を喰べて僕の中で生き続けて。それで、たまには僕に会いに来てくれよ。

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骸を抱いて、喰べて 青木 司 @tukdsa_28

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